北海道の観測地点の中から都市化の影響を受けることの少ない5地点(稚内、網走、根室、浦河、寿都)を選んで以下の解析に使用しました。 左下の図は、北海道の冬季の気温と海面気圧の相関係数分布図です。北極で気圧が低く、大西洋や北太平洋北部で気圧が高いと暖冬になることを示しています。その他、シベリア高気圧が弱ければ暖冬、アリューシャン低気圧が弱ければ暖冬という関係もここからわかります。こうした気圧偏差分布は、上空ではいわゆる北極振動のパターンを伴っています。右下の図は、北海道の冬季の気温と対流圏全体の気温の指標としてよく使われる500hPa高度の間の相関係数分布図です。北極で高度が低く(=気圧が低い)、大西洋や北太平洋北部で高度が高い(=気圧が高い)と暖冬になることを示しており、海面気圧より北極振動のパターンがよく見えています。
下のグラフは、冬季の北極振動指数(AO インデックス)と札幌(赤)、根室(緑)の気温の変動を示しています。北海道の気温とAOインデックスは平行して変化していることがよくわかります。
下の図は、北海道の夏季の気温と海面気圧(左)および、500hPa高度(右)の相関係数分布図を示しています。 夏は冬と異なり、海面気圧では日本中部〜太平洋にかけた正相関とオホーツク海での負相関がはっきりしています。これは、日本付近〜太平洋で高度が高く、オホーツク海高気圧が弱ければ、暑夏になることを示唆するものです。北極振動との関係は、はっきりしません。
下の図は、北海道の気温と全球の海面水温との関係を示したものです。冬(上)でも夏(下)でも、北海道の気温は周辺の海面水温と正の相関があることが分かります。正の相関は冬の方が東への広がりが大きくなっています。また、日本の南海上の海面水温と負の相関があることは興味深い点です。エルニーニョ海域である東部赤道太平洋域とは、冬も夏も大きな相関が見られません。このことは、北海道の気候とエルニーニョとの間には直接的に強い関係がないことを表しています。