南極底層水とは、北大西洋深層水とともに、世界の全大洋の深・底層水の源となっており、その生成量は世界の海洋を巡る海洋深層循環の強弱を左右します。南極底層水の生成域としてはウエッデル海やロス海が良く知られていましたが、東経140度付近のアデリーランド沖の海域も重要な生成域であることが、近年判って来ました (右図参照)。
北海道大学では、国内外の研究機関と協力して、アデリーランド沖の海域における海洋観測を行い、この底層水の変化を明らかにしました。下の図に示すのは、1969年から2003年の底層水の水温と塩分の変化で、塩分が低下していることが判ります。この変化は、傾向としては深層循環が弱まるセンスにあることを示している可能性が高く、今後更に注意深く観測して行く必要が有ります。
Courtesy of S. Aoki
海氷(海水が凍った氷)が生成されるとき、海水の塩分の大半は氷から吐き出されるので、塩分の高い重い水が作られる。南極海の沿岸近くでは大量の海氷が生産されるために、この時に作られる重い水は、海底に沈みこみ、世界で一番重い海水である南極底層水として、世界中の底層に拡がっていく。海氷生産が大きい所で重い水が作られるわけであるが、どこでどのくらい海氷が生産されているかはよくわかっていなかった。 下図は、人工衛星データに現場観測・気象データも組み合わせて、南極では初めて海氷の年間生産量の空間分布(マッピング)を示したものである。最も海氷生産が高い海域はロス海であり、ここが最も高塩の南極底層水の生産域であることによく対応する。ロス海に次ぐ高い海氷生産領域が日本の南極昭和基地東方約1200kmにあることもわかった。ここが未知の南極底層水生成域である可能性が示され、それを確かめるべく、ここでの集中観測が2008年より開始された。
図:南極海における年積算の海氷生産量のマッピング(厚さに換算) Tamura, Ohshima, and Nihashi (2008)を一部加筆。 |
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