2013年より始まった修士課程の秋季特別入試について説明します。2024年から少し変更になっています。他の入試についてはこちらを参照してください。
本入試の趣旨は、既存の入試(8月と2〜3月)に比べより多様な学生を広く求めることです。いわば大学院版のAO入試であり、志望動機等に関する書面と口述試験を重視します。従来の筆記試験だけでは測りにくい能力や経験、意欲などをもとに総合的に判断します。
我々としては、例えば次のような学生を想定しています。なお、いずれの場合も数物系の素養がある程度はあることが前提となります(その点をみるために「基礎学力試験」を実施します:下記)。
なお、受験にいたるきっかけは、(様々な分野で)大学院を受験したが結果が思わしくなかったり、就職活動等を通して改めて進路を考え直したりといったことでも構いません。このウェブページを開いた人はおそらく、大気や海洋、地球環境に何らかの興味を持つ人でしょう。偶然の出会いや「なにかピンときた」ことがきっかけでも、モチベーションを高められれば良いのです。
本コースには従来から、一旦社会に出た後学び直そうという人も多く入学しています。そのような人の受験も歓迎します。
実施時間等については募集要項をご覧ください。
事前連絡があれば試験日の3週間前をめどに、事前連絡がなかった場合は受験票とともに、解説記事等(数物系の学術誌に掲載された記事や本・教科書などの一部など長さ数ページ程度のもの)を課題文として一編送付します。学術誌は主に発見等を報じる原著論文を掲載しますが、「解説記事」はそれと異なり、文字通り解説を行う記事です。その内容は、特定のテーマについての最新動向のリポートや、初学者または研究者向けの解説などです(課題に選ぶのは専門家向けではないものにする予定です)。
なお、2023年11月(2024年度入学)までは課題文は英文のみでしたが、2024年からTOEIC等のスコアシート提出が必須となったことに伴い、課題文に和文も含まれるよう変更されました。
発表と質疑応答を通して我々がみたいのは、科学的な内容を大づかみに把握してわかりやすく表現する力です。
どのような課題文が出題されるか一例をあげます:
"Power and spin in the beautiful game", J.E. Goff 著, Physics Today 誌, 2010年, 第63巻, 7号, p.62-63. (doi: 10.1063/1.3463636)
この記事はサッカーのワールドカップ開催に寄せ、フリーキックなどを題材に、ボールの軌道を決める空気抵抗の大きさや向きを、物理学の観点から一般的に解き明かしたものです。ボールの速さがある一定値よりも遅くなると急に空気抵抗が増す drag crisis という現象があること、それがボールの表面にできる境界層という薄い層のでき方の変化によること、レイノルズ数という無次元の指標を使うとその一定値がほぼボール表面の凹凸のみに帰着できること、ボールの回転によってカーブさせる力の働き方などが、短い2ページの記事で次々と紹介されます。現象を統一的に語る物理学的な観点から特に力を入れて紹介されているのは、無次元化の威力です。それによって、大きさの違うゴルフボールとサッカーボールが直接比較でき、表面が粗い(凹凸が多い)ほど drag crisis が起きにくい(比較的低速まで抵抗係数が小さく保たれる)ことが視覚的に示されます(Fig.1)。さらに、本文中に挙げられている数値から思いをめぐらせば、なぜゴルフボールにはあれだけの凹凸が必要であるかもわかるはずです。サッカーワールドカップの公式球の測定結果の話などもあります。
10分間で課題文の概要を説明してください。なるべく内容を咀嚼して、図なども適宜使用し、わかりやすく説明することを心がけてください。課題文全体を万遍なく説明する必要はありません。全体をある程度把握していることは求められますが、興味をもったところについてより深く噛み砕いて説明するなど、軽重を付けたり再構成して発表すると良いでしょう。自分なりの考察を付け加えるのも良いですが、1割程度以内にとどめてください。その後約10分間質疑応答を行います。なお、内容をすべて把握することは求めません(それは難しいケースが多いでしょう)。わからないことはわからないと言って構いません。
発表にはプロジェクターが利用できます。利用希望者はノートPCを持参するか、発表用のファイルを収めたUSBメモリーを持参してください。会場にはPowerPointとPDFが利用できるWindowsのノートPCを用意します。他に、ホワイトボードも利用できます。
約10分間で行います。書面は基礎学力試験開始時に提出してもらいます。それをもとに質疑を行いますので、発表の準備は必要ありません。
入学年度 | 試験実施時期 | リンク/書誌情報 |
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2025年度 | 2024年11月 | 課題文 (Nature 誌) |
2024年度 | 2023年11月 | 課題文 (EOS 誌) |
2023年度 | 2022年11月 | 課題文 (Physics Today 誌) |
2022年度 | 2021年11月 | 課題文 (Physics Today 誌) |
2021年度 | 2020年11月 | J. N. Shive and R. L. Weber, "Similarities in Physics", 1982, CRC PRess (書籍), pp 25-29. (抜粋) |
2020年度 | 2019年11月 | 課題文 (Physics Today 誌) |
2019年度 | 2018年10月 | 課題文 (Physics Today 誌) (オープンアクセスではありません. 大学等の電子ジャーナルアクセスを通して読めない場合はご連絡ください). |
2018年度 | 2017年10月 | 課題文 (Physics Today 誌). |
2017年度 | 2016年10月 | 課題文 (Physics Today 誌) |
2016年度 | 2015年10月 | Physics Today, vol.65, issue 3, p.66-67 (2012) [著者サイトでの公開PDF] |
2015年度 | 2014年10月 | 課題文 (Physics Today 誌) |