2010 年6 月1 日−8 月27 日の約3 カ月間、NCAR(National Center for Atmospheric Research; コロラド州Boulder) およびIPRC(International Pacific Research Center; ハワイ州Honolulu)で滞在研究を行いました。
Boulder はロッキー山脈を西に望む標高1500 m 程度の高地に位置する学園都市です。日本では、陸上選手が高地合宿を行う町として有名でしょう。「天国に一番近い学園都市」と呼ばれるだけあって町並みはとても綺麗で緑も多く、リスやプレーリードック、タヌキやキツネもたびたび住宅地に出現するというなんとも嬉しい環境で生活を送っていました。治安もとてもよく、夜中にふらふらと帰ってもとくに危険を感じることはありませんでした。
Boulder には数多くの大気科学に関する研究機関が集結しています。National Center for Atmospheric Research (NCAR), University of Colorado (CU), National Oceanic and Atmospheric Administration (NOAA), Colorado Research Associates(CoRA) などです。
私はそのうちNCAR のHigh Altitude Observatory (HAO)というDivision に滞在し「再解析データで明らかになった対流圏−下部中間圏の大気潮汐の研究」と題して共同研究を行いました。ホストをお願いしたMaura Hagan 氏は、現在世界で幅広く使われている大気潮汐モデルの開発者で、大気潮汐研究の権威である方です。HAO はHigh Altitude と言うだけあって対象はかなり上(熱圏・電離圏)で、私が「下層の潮汐を研究している」というと「中間圏か?」と言われるほどでしたが、昼休みには揃って昼食を食べるという楽しい習慣があり、多くの上層大気専門家と仲良くなることができました。気象学会にいる限り出会うことはなかったであろうこれらの出会いを今後の研究に生かせればと考えています。
HAO があるCenter Greenキャンパス | Maura Hagan 氏とのツーショット。 |
Boulder での研究環境は非常に魅力的な点がいくつかありました。まず何よりも研究人口が多いので、あらゆる分野の専門家が近くに(しかも複数)いて、ちょっと足を延ばせば議論をしたりアドバイスをもらったりできることでした。事実私も滞在中にはNCAR, NOAA, コロラド大、CoRA の多くの研究者とセミナー・個別の議論を通して繋がりを持つことができ、今後研究を進める上で大きな財産を得たと確信しています。また、二つ目は、分業体制が確立しているということです。PC の設定はエンジニアがほとんどすべてやってくれマニュアルも揃っているので、PC 嫌いの私としては非常に助かりました。また、ポスターを印刷する際には、メールで送れば印刷されてしかも自分のブースに配達してくれるという、まさに”至れり尽くせり”なのでした。
NCAR には私の他にも滞在研究をしている博士課程の学生が数多くいて、多くの友達をつくることができました。休日にはその友達とMLB の試合を観戦したり、コロラドの自然を満喫したりと研究以外の余暇も存分に楽しむことができました。
友達とMLB(ロッキーズ V.S. カブス)を観戦。福留は三振でした。 | 本専攻卒業生の三角さん(NCAR に滞在中)にロッキーマウンテン国立公園に連れ行ってもらいました。標高3500 m くらいまで車で行けます。ちょっと歩いただけで息切れします。 |
ハワイの気候・街並み・人々はいずれもBoulder のそれとは全く違い、まるで東南アジアに来たかのような印象を受けました(私自身東南アジアに行ったことはありませんが)。日本人および日本語を話す現地人の数が非常に多く、おそらくここでは英語を使わなくても生きていけるなと感じたほどです。
IPRC はHonolulu 市内ワイキキビーチから徒歩30 分ほどに位置するハワイ大内にあります。ここではKevin Hamilton 氏にホストをお願いしました。Kevin 氏はIPRC の所長で、私の研究対象である大気潮汐の権威でもあります。滞在中は私の研究内容について議論をしていただき、共同研究を始めるきっかけを作ることもできました。また、IPRC では「対流圏・成層圏の日変動」と題してセミナーをさせていただき、謝先生をはじめ他の多くの研究者と交流を持つこともできました。
また、ハワイは言うまでもなくバカンスの地です。ハワイ州ではなんと金曜日も休日ということで、週末は予想外の3連休でした。棚からぼた餅とばかりにワイキキに繰り出し、泳いだり釣りをしたり、ダイヤモンドヘッド山に登ったり、フラダンスを鑑賞したりと、一観光客としてリゾート気分を思う存分に満喫することができました。
このように、アメリカでは公私ともに充実した生活を送ることができました。同時に感じたことは、「日本文化は素晴らしい!」ということです。特に日本食・・・私は食べることを生き甲斐としているので、食がいまいちだと毎日の楽しみが激減します。その点、アメリカ料理の大雑把でやたらと甘い味付けには随分苦しめられました。(アメリカ滞在中はほぼ自炊をし、日本食を作って鋭気を養っていましたが。) 日本料理の繊細な盛り付け、味付け(”だし”という概念)は世界に誇るものだと思います。日本文化の素晴らしさを再認識する上でも今回の滞在は非常に良い経験となりました。
3 か月というのは本当にあっという間でした。ホームシックならぬ日本食シック、日本文化シックとの兼ね合いですが、次は1年くらい滞在して多くの研究者と交わりつつじっくりと研究してみたいなと考えています。
以上、旅行記のようになってしまいましたが、研究の話はまた別の機会に・・・
最後になりましたが、このような貴重な機会を与えてくださった北大環境科学院GCOE「統合フィールド環境科学の教育研究拠点形成」からの支援に心より感謝いたします。