一般講演

一般講演の発表者は、口頭発表4名ポスター発表13名です。

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口頭発表

(以下五十音順)

発表者池川 慎一
題目金星雲頂における風速推定の研究
要旨 雲は風速に流されているという仮定のもと、 トレーサーである雲の特徴を追跡することで風速推定が行われてきた。特に、過去の研究では、金星の大気大循環や運動量フラックスを調べるために、相互相関法による風速推定が用いられてきた。単純な相互相関法に基づく風速推定は、誤った結果をもたらすことがある。そこで、本研究では、短時間間隔で撮像された多数枚のデータを用いて推定を安定化させ、精度の確保を試みた。
 過去の研究では、主に風速の変動性に基づく精度推定が行われてきた。本研究では、(1)統計的な精度評価と(2)風速推定の結果を用いた精度評価手法を開発した。

発表者齊藤 雅典
題目リモートセンシングのこれからを考える〜デジタルカメラで見える未来〜
要旨 気象学・気候学の研究に欠かすことのできない雲や雨の観測データ。その多くが、地上や衛星搭載測器による、大気放射学を基盤としたリモートセンシングによって取得されている。衛星観測技術はここ10年で飛躍的に向上した。一方で地上観測は今後どうなっていくのか?リモートセンシングの歴史を振り返りつつ、講演者の研究であるデジタルカメラを用いたエアロゾル観測技術の開発までを紹介する。美しい空の写真が、観測データに変わる日が来るかもしれない。

発表者林 未知也
題目2014年に起きた西風イベントに伴う海洋場の変動
要旨 熱帯西部太平洋で1週間程度強い西風が持続する現象は西風イベントと呼ばれており,ときに強いエルニーニョ現象の引き金となる.2014年の1月から3月にかけて顕著な西風イベントが2度起き,予測されているエルニーニョ現象への影響は興味深い.本研究では,これらの西風イベントが海洋ケルビン波を増幅する過程に着目して調査した.西風イベントがもたらす赤道潜流の変動を通じて効率よくケルビン波を増幅させることで,熱帯東部太平洋における海面水温偏差に0.6度程度の影響をもたらしたことが考えられる.

発表者山崎 哲
題目大気ブロッキングによる冬季関東での異常気象:2014年2月の事例
要旨 ブロッキングは,偏西風を局所的に数週間程度させるため様々な異常気象と関係している.2014年2月の初・中旬に日本の東側に発生したブロッキングは同時期に関東域に大雪をもたらした南岸低気圧の経路や進行速度に影響を与えたことが報道等で指摘されたので,この事例について総観規模以上の観点から調査し,また同様なブロッキングによって過去にも関東域に異常気象をもたらしたことがあるのかを調査した.



ポスター発表

(以下五十音順)

発表者市川 悠衣子
題目Error growth of JMA one-month forecast projected on the MJO phase space
要旨 This study investigates the systematic bias and initial-value dependency of forecast on the Madden Julian Oscillation (MJO), in terms of the MJO state and its time evolution on the phase space, by using the JMA one-month forecast in 2008 to 2013. The systematic bias and forecast spread projected onto the MJO phase space are large when MJO-related convection is located in a region from the Indian Ocean to the eastern tropical Pacific. Elsewhere, they are large with a small MJO amplitude. Comparing an axisymmetric counter-clockwise motion in the average time-evolution in the reanalysis data on the MJO phase space, the forecast tends to show an inward flow in the phase space especially from Indian Ocean to eastern Pacific. It is suggested that the JMA model has a systematic bias that the MJO tends to decrease its amplitude there.

発表者勝部 弘太郎
題目海面水温を変えた熱帯低気圧の温帯低気圧化の数値実験
要旨 2004年台風18号に関する領域モデル実験によって,海面水温に対する温帯低気圧化の鋭敏性を調べた。海面水温の値をそのまま用いた標準実験、一様に2度上げた(下げた)暖水実験(冷水実験)を行った。海面水温が高い場合ほど、東シナ海で転向した後に、低気圧は南東寄りの経路をとった。また、線形傾圧モデルで低気圧の非断熱加熱を強制力とした線形応答を調べたところ、低気圧の経路を説明する応答であった。

発表者シェリフ多田野 サム
題目巨大氷床が北大西洋に与える影響
要旨 現在、地球上には南極やグリーンランドに氷床が存在しており、気候に影響を与えていることは知られているが、過去にはさらに巨大な氷床が北米を覆っていたことが明らかになっている。この北米の氷床は北大西洋の大気や海洋に大きく影響を与えていたことが多くのモデル研究から指摘されてきている。本発表では、大循環モデルを用いた実験をもとに、この北米氷床が北大西洋の大気循環や海洋循環に与えていた影響について紹介する。

発表者高畑 若奈
題目2012年春季におけるCReSSを用いたアジアダストの再現実験
要旨 本研究では,2012年4月30日に札幌でアジアダストが観測されたことを受け,このアジアダストの起源を調べるために数値モデルCReSSを用いて再現実験を行った.続いて,初期時刻を29日00UTCから24時間とし,上空1000m~3000mのサインシャンド周辺の数地点を始点とする流跡線解析を行った.各地点からの空気塊は,急激に3500mの高度を越えて上昇し,東に移流した.サインシャンドではアジアダストの発生が確認されており,巻き上がれば,偏西風により移流される可能性が示唆された.

発表者棚村 菜央
題目札幌市近郊における冬季のヒートアイランド現象について
要旨 ヒートアイランド現象は冬において顕著に発生することがわかっている。しかし、降雪が多い地域、北海道札幌市のような都市での研究は数が少ない。今回、冬季の札幌市においてのヒートアイランド現象の実態を明らかにした。昼間は円山小学校周辺で、夜間から早朝にかけては都市部に近い資生館小学校周辺で発生していることが確認できた。

発表者玉置 雄大
題目夏季北海道におけるサンプリングダウンスケーリング
要旨 力学的ダウンスケーリング(DDS)の計算を効率化する新手法,サンプリングダウンスケーリング(SmDS)(Kuno and Inatsu 2014)を夏期北海道の降水に適用した.日本付近における水蒸気フラックス収束と北海道の降水に対して統計解析を行い,DDSの積分期間として30年から4年をサンプルした.その結果SmDSが推定した降水統計量は30年積分したDDSが推定するそれと類似した空間分布を示した.さらにSmDSの誤差が大規模場と地域場の相関係数に依存することが新たに分かった.

発表者辻 宏樹
題目何が台風の大きさを支配しているのか?
要旨 台風の大きさは、台風の強さとともに台風を特徴づける重要な性質である。しかし、台風の大きさを支配するメカニズムは未解明である。本研究の目的は、数値実験によって大きさの変化メカニズムを明らかにすることである。
 数値実験の結果から、二次循環(動径―鉛直断面での循環)の動径方向の広がりが重要であることが明らかになった。今回の夏学ではこれまでの台風研究のレビューとともに、この結果について発表する予定である。

発表者所 悠香
題目内暈の発現と氷晶雲の微物理特性の関係
要旨 氷晶雲がつくる光学現象である内かさ(22°ハロ)の発現や明瞭さは、氷晶の種類や粗度、有効半径、雲の光学的厚さなどに依存性があることが知られている。しかし、全ての要素について同時に調べられた研究は少ない。そこで本研究では、放射伝達モデルを用いて、各要素が内かさに与える影響を調べた。更に、地上からの写真観測と衛星観測データをあわせることで、現実の「内かさがある雲」の微物理特性の関係について明らかにした。

発表者中山 翼
題目ガーナにおける気象情報の空間詳細化
要旨 ガーナは主産業が第一次産業であるため,特に気候変動の影響を受けやすいと考えられている.そのため,このような地域における空間詳細な気象解析や気象予測は,気候変動適応政策立案のために重視されている.本研究の目的は,ガーナにおける空間詳細な現在気候の再現と,近未来における気候変動の予測である.数値モデルのWRF(Skamarock et al. 2008)を用いて現在気候でのダウンスケーリング実験を行うことで,地域詳細な降水分布を議論することが可能となった.現在は温暖化を想定した将来気候についてのダウンスケーリング実験に取り掛かっている.

発表者藤田 遼
題目北極域における炭素・水素同位体比分析に基づいた大気中メタン濃度変動の原因解釈
要旨 メタンは二酸化炭素に次いで2番目に地球温暖化に寄与する温室効果気体である。産業革命以降急速に濃度が上昇し、現在の全球平均濃度は当時の2倍以上にまで達した一方で、近年における濃度増加率は1990年頃から減少し、2007年以降再上昇するという特異的な変動を示しており、それらの原因は未だ特定できていない。本研究では、温暖化の進行が最も顕著に現れる北極域に位置するスバールバル諸島ニーオルスン基地(79°56’N, 11°52’E) において、2004年以降に得られた観測データに関する解析結果について報告する。

発表者町村 輔
題目An analysis of PJ pattern based on JRA-55 reanalysis dataset
要旨 夏期の熱帯西部北太平洋(WNP)上の対流活動偏差は中緯度WNP上の大気循環に影響を与え、これはPacific-Japan(PJ)パターンとして知られている。JRA-25を用いた先行研究(Kosaka and Nakamura 06,10)では、PJパターンが乾燥エネルギー変換と湿潤エネルギー生成の両方によってその構造を維持する力学モードであることを示されている。本研究では、先行研究よりもデータ期間の長いJRA-55の月平均データを用いて、55年間でPJパターンが最も卓越すること、力学モード性を持つことを確認した。さらに、その長期変調についても議論する。

発表者三井 文乃
題目大気上端における短波放射強制力の雲の鉛直分布による違い
要旨 雲の光学的厚さが大きくなるほど、大気上端における負の放射強制力は大きくなることが知られている。今回は雲の鉛直分布による放射特性の違いに注目し、鉛直積分した光学的厚さが同じ場合で雲層の数が違うときの、大気上端における放射強制力の違いについて調べた。その結果、短波放射の放射特性は雲の鉛直分布に影響を受けることが示唆された。この原因については、大気の水蒸気による吸収や雲粒子の相による散乱特性の違いなどが考えられる。

発表者宮本 歩
題目南インド洋亜熱帯高気圧の季節変動
要旨 南インド洋の亜熱帯高気圧は,中心が夏季は海盆の東側に存在する一方,冬季は海盆の西側に存在するという,顕著な季節性を示す.夏季の亜熱帯高気圧は海陸加熱コントラストによって形成されることが知られているが,冬季の形成メカニズムは明らかになっていない.本研究は,再解析データを用いて,冬季の亜熱帯高気圧の三次元構造と形成力学を調査すると共に,この亜熱帯高気圧の顕著な季節進行についても考察を加える.スペースがあれば,下層雲の季節進行についても議論する.