出版物

台風研究に関する出版物リスト

Image of Tsukada et al. (2024)

台風に特化した大気追跡風が明らかにする台風の眼の風速構造


静止気象衛星から台風の大気追跡風を導出する新手法を開発し、3つの台風事例で検証しました。全事例において波数1型の擾乱が観測され、うち一事例では眼の中の角速度が1時間以内に1.5倍になる急加速がありました。この加速にはメソ渦による角運動量輸送が寄与した可能性を示しました。

Citation: Tsukada, T., T. Horinouchi, and S. Tsujino, 2024: Wind distribution in the eye of tropical cyclone revealed by a novel atmospheric motion vector derivation. Journal of Geophysical Research: Atmospheres, 129, e2023JD040585. https://doi.org/10.1029/2023JD040585.

Image of Arakane & Horinouchi (2024)

航空機観測データが含まれたベストトラックデータを用いた熱帯低気圧の実際の風気圧関係と調整された風気圧関係の評価


熱帯低気圧 (TC) の最大持続風速 (Vmax) と最低海面気圧 (Pmin) の関係 [風気圧関係(WPR)] を航空機観測を用いたベストトラックデータを用いて調べた。あるVmax (Pmin) に対して、Pmin (Vmax) は平均して25%~75%間で8.5 hPa (11.0 kt)、10%~90%間で17.1 hPa (22.6 kt) 変化した。また、それに対応するDvorak強度の変化も定量化した。また環境条件を重回帰に組み込んだ修正WPRも調査した。その結果、25%~75%間の変動は6.9 hPa (9.5 kt)、10%~90%間の変動は13.0 hPa (18.9 kt)に減少した。これらの変動はWPRの本質的な変動を示しており、TCの強度推定を改善するために観測データをさらに活用する必要性を示唆している。

Citation: Arakane, S., and T. Horinouchi, 2024: Evaluations of actual and adjusted wind–pressure relationship of tropical cyclone using aircraft-assisted best track data. SOLA, 20, 23−30. https://doi.org/10.2151/sola.2024-004.

Image of Tsujino et al. (2024)

単一ドップラーレーダー観測からの渦循環推定を改良するためのヘルムホルツ分解に基づいた新しいクロージャー仮定と定式化


本研究では非対称動径風を考慮することで、単一ドップラーレーダ観測からの渦循環推定を改善する新しいクロージャー仮定と定式化を提案した。非対称な理想化渦における軸対称接線風推定の相対誤差は最大風速半径付近で2%以下であった。楕円形の壁雲を持つ台風の実事例に適用して、新方法がこれまでの循環推定技術においてみられた接線風の人工的な時間変化を大きく抑制できることを見いだした。

Citation: Tsujino, S., T. Horinouchi, and U. Shimada, 2024: A New Closure Assumption and Formulation Based on the Helmholtz Decomposition for Improving Retrievals for Vortex Circulations from Single-Doppler Radar Observations. Monthly Weather Review, 152, 145–168. https://doi.org/10.1175/MWR-D-23-0043.1.

Image of Horinouchi & Mitsuyuki (2023)

多数の発電帆船を運用した際の大気への影響のアセスメント手法と台風に関する試算


帆船による発電は、世界の主要な再生エネルギー源の一つとなるポテンシャルがあります。本論文では、その際の大気への影響評価法の基礎を提案しました。台風の下で運用する場合について、MPI理論にもとづいて台風強度への影響も論じています。

Citation: Horinouchi, T., and T. Mitsuyuki, 2023: GrossGross Assessment of the Dynamical Impact of Numerous Power-Generating Sailing Ships on the Atmosphere and Evaluation of the Impact on Tropical Cyclones. SOLA, 19, 57-62. https://doi.org/10.2151/sola.2023-008.

Image of Tsukada & Horinouchi (2023)

台風の目の半径と最大風速半径の強固な関係


静止気象衛星から測定した台風の「目の半径」と、C-band SAR衛星からリトリーブされた海上風で測定した台風の「最大風速半径(RMW)」の間に非常に高い相関(cc=0.97)が見つかりました。この関係を利用することで、静止衛星で測定した目の半径からの回帰で、観測がレアなRMWを広範囲・高頻度・高精度に推定可能となります。

Citation: Tsukada, T., and T. Horinouchi, 2023: Strong Relationship between Eye Radius and Radius of Maximum Wind of Tropical Cyclones. Monthly Weather Review, 151(2), 569-588. https://doi.org/10.1175/MWR-D-22-0106.1.

Image of Horinouchi et al. (2023)

台風の目の中の定常及び非定常構造と波数1不安定:30秒撮像による大気追跡風を使った台風 Haishen (2020) のケーススタディ


ひまわり8号を使って実施した、30秒間隔という超高時間分解能での特別観測により、これまで考えられなかった高い時空間分解能で風速分布を得ることができました。その結果、ある種の波数1型の不安定が目の中で角運動量を再分配し、中心付近の加速に寄与していたことが明らかになりました。この不安定は多くの台風の中で重要な役割を担っている可能性があります。

Citation: Horinouchi, T., S. Tsujino, M. Hayashi, U. Shimada, W. Yanase, A. Wada, and H. Yamada, 2023: Stationary and Transient Asymmetric Features in Tropical Cyclone Eye with Wavenumber-one Instability: Case Study for Typhoon Haishen (2020) with Atmospheric Motion Vectors from 30-second Imaging. Monthly Weather Review, 151(1), 253-273. https://doi.org/10.1175/MWR-D-22-0179.1.

Image of Yanase et al. (2022)

温帯低気圧化中の台風 Hagibis (2019) の北側に集中した降水の複合的な力学


Citation: Yanase, W., K. Araki, A. Wada, U. Shimada, M. Hayashi, and T. Horinouchi, 2022: Multiple Dynamics of Precipitation Concentrated on the North Side of Typhoon Hagibis (2019) during Extratropical Transition. Journal of the Meteorological Society of Japan Ser. II, 100, 5, 783-805. https://doi.org/10.2151/jmsj.2022-041.

Image of Tsujino et al. (2021)

2018年台風Tramiの壁雲置き換わり時における内部コア風速場:ひまわり8号にもとづく定量解析


2018年台風Tramiの多重壁雲形成後における内側壁雲消失過程を、ひまわり8号衛星から求めた内部コア接線風速の変化と、理想化数値実験によって調べました。Trami における内側壁雲の接線風が、おもに順圧不安定による非軸対称な渦の運動量輸送によって減速されていたことを明らかにしました。

Citation: Tsujino, S., T. Horinouchi, T. Tsukada, H.-C. Kuo, H. Yamada, and K. Tsuboki, 2021: Stationary and Transient Asymmetric Features in Tropical Cyclone Eye with Wavenumber-one Instability: Case Study for Typhoon Haishen (2020) with Atmospheric Motion Vectors from 30-second Imaging. Journal of Geophysical Research: Atmospheres, 126, e2020JD034434. https://doi.org/10.1029/2020JD034434.

Image of Tsukada & Horinouchi (2020)

ひまわり8号を用いた台風内部コア領域の風速推定と非軸対称構造の定量化


「台風の目」の中で吹いている下層の風を静止気象衛星から推定する新手法を開発し、2017年の台風に適用し、その有用性を示しました。さらに、非軸対称な運動として可視化されたメソ渦や壁雲内側の高速回転域の定量化を行いました。

Citation: Tsukada, T., and T. Horinouchi, 2020: Estimation of the Tangential Winds and Asymmetric Structures in Typhoon Inner Core Region Using Himawari-8. Geophysical Research Letters, 47, e2020GL087637. https://doi.org/10.1029/2020GL087637.

Image of Tsujino & Kuo (2020)

数値シミュレーションによって再現された2013年スーパー台風Haiyanにおける渦位の混合と急発達


2013年スーパー台風Haiyanの数値シミュレーションにより、メソスケールの渦に伴った壁雲から眼の中への力学的な渦位の流入を定量化しました。その渦位の流入が急発達開始周辺で発生し、眼の昇温と急発達に伴っていたことを示しました。

Citation: Tsujino, S., and H.-C. Kuo, 2020: Potential vorticity mixing and rapid intensification in the numerically simulated Supertyphoon Haiyan (2013). Journal of the Atmospheric Sciences, 77, 2067-2090. https://doi.org/10.1175/JAS-D-19-0219.1.

Image of Horinouchi et al. (2020)

熱帯低気圧中の重力波を伴う対流バースト: ひまわり8号を用いた事例研究と理想化数値実験


台風の発達期によく発生する対流バーストにともなう上層雲の先端は、しばしば有限振幅の重力波である内部ボアとしてふるまうこと、その重力波はやがて上層雲から離れて伝搬すること、またこれらの現象から考えられる応用を示しました。

Citation: Horinouchi, T., U. Shimada, and A. Wada, 2020: Convective bursts with gravity waves in tropical cyclones: Case study with the Himawari‐8 satellite and idealized numerical study. Geophysical Research Letters, 47, e2019GL086295. https://doi.org/10.1029/2019GL086295.