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第 116 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ
日 時:2001年 10月 22日(月) 午後 16:30 〜 17:30
場 所:地球環境科学研究科 C棟 C104
発表者:上延 史 (気候モデリング講座 M2)
題 目:台風域内の対流性雲の日変化
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台風域内の対流性雲の日変化 (上延 史) 発表要旨 :
台風域内のTbb(黒体輝度温度)分布は明瞭な日変化を示すことが知られている。
Muramatsu(1983)は6個の台風で、Tbb≦-70℃、-70℃≦Tbb<-50℃、-50℃≦
Tbb<-30℃、-30℃≦Tbb<0℃となる雲域面積の台風領域全体の面積に占める
割合の時系列を調べた。その結果、Tbb閾値で分類した全ての雲域で2種類の
日変化パターンがあることを明らかにした。
一つ目は山が一つ谷が一つ現れるパターン(『山谷パターン』)、二つ目は山
が二つ現れるパターン(『山山パターン』)である。Tbb≦-70℃の雲域での
『山谷パターン』の山と谷は各々朝と午後に存在する。これは朝に背の高い
対流性雲域が多く午後は少ないことを示唆する。またTbb≦-70℃の雲域での
『山山パターン』の二つの山は朝と午後に存在する。これは午後にも背の高
い対流性雲域が多いことを示唆する。
Muramatsu(1983)は『山山パターン』が現れる要因として、台風が島付近をゆっ
くり通過したことによる陸の影響と中心気圧の時間変化率が小さいことを挙げた。
一方、Gentry and Seteranka(1984)は23個の台風でTbb≦-60℃以下の雲域面積
の台風領域全体の面積に占める割合の時系列のコンポジット解析を用い、
『山谷パターン』に関して山と谷が現れる時間帯を調べた。この結果、
Muramatsu(1983)と同様Tbb≦-60℃以下の雲域での日変化の山は朝、谷は午後
に現れることを示した。
過去の研究から、朝に日変化のピークがあることは台風一般に現れる共通
の特徴のように思われる。しかしながら、過去の研究ではコンポジット図が
多く用いられており、個々の台風の雲活動の日変化が示されているわけでは
ない。また扱われた事例も、Browner et al.(1977)、Muramatsu(1983)、
Gentry and Steranka(1984)を合わせても40弱しかない。従って、対流性雲域
の台風領域全体の面積に占める割合が朝に最大、午後に最低となる日変化が
台風一般に見られるかどうかについては、更に事例数を増やして検討する必
要があると思われる。また、Muramatsu(1983)で示された午後にピークが現れ
る場合、 陸の効果や中心気圧の時間変化率と対流活動度の関係についてはほ
とんど議論されていない。
そこで本研究では、1999、2000年の38個の台風を対象とし、Tbb分布の日変化、
中心気圧の時間変化、台風中心から500Km以内に陸域を含む時間を調べ、上述の
疑問点に対する考察を試みた。使用したデータは気象衛星ひまわり(GMS)5号の
VISSR放射データ、気象庁発行のベストトラック、中心気圧、最大風速データ、
NGDC ETOPO5全球地形データである。
解析したところ以下の結果が得られた。個々の台風で1日のうちのTbb≦-7
0℃の雲域面積の台風領域全体に占める割合の最大値が表れやすい時間帯は
朝に多く見られた。これは過去の研究で示された、背の高い対流性雲域の日
変化が朝に最大となる結果と一致する。
雲域の面積の日変化のパターンに関しては、個々の台風に対するTbb≦-7
0℃の雲域の割合の時系列のコンポジット図を4種類の型に分類することがで
きた。それらは『山谷パターン』、『山山パターン』の他に朝ピーク午後(
明瞭な最高や最低のピークがみられない意味で)一定型とその他である。そ
のなかで『山山パターン』は38例中8例存在し、午後に日変化のピークが見ら
れることは稀な現象ではないといえる。
『山谷パターン』と『山山パターン』に対して、陸の影響を各々の台風が
存在した期間に対する海陸の滞在期間比から考察した。陸域を含む時間が長い
例は『山谷パターン』が8例中7例、『山山パターン』が8例中3例であった。
さらに『山山パターン』が現れるときの時系列に対して、Muramatsu(1983)で
示唆される、中心気圧の時間変化率が小さいことに着目して検討を行った。
『山山パターン』が現れるときの中心気圧の時間変化率はそうでないときの
値に比べて小さいものであった
本研究では過去の研究と異る点が二つあった。一つ目は台風領域での対流
性雲の日変化に午後にもピークが現れることが稀な現象ではないことである。
二つ目として午後のピークが現れるのは陸の効果があるとは必ずしも限らな
いことである。ただ二つ目はコンポジット解析であるため、Muramatsu(1983)
と異る結果が出た可能性がある。そこで日変化に影響を与える陸の大きさや
影響が現れる時間スケールの見積り等を行い日変化に与える陸の影響を再度
検討する必要がある。
また、中心気圧の時間変化と対流活動の強弱の因果関係について考察する
予定である。今回、中心気圧の時間変化率によって日変化の振舞いが変わる
ことを示した。Gentry and Steranka(1984)では台風強度が強いほど、振幅が
小さいことも示している。そこで今後は振幅に対して個々の台風の様々な状
況に即した日変化の特徴についても明らかにしたい。
以上の問題点を解決し台風領域の対流性雲の日変化の特徴が明らかになれ
ば、熱帯域の対流活動の日変化のメカニズムに対しても示唆を与えるものと
期待される。なぜならば、熱帯海洋上の対流性雲の日変化も台風域と同様の
日変化を示すことが知られているからである。
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