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第 410 回 大気海洋物理学・気候力学セミナー のおしらせ

日 時:11月20日(木) 09:30 - 11:00
Date :Thu., 20th Nov. 9:30 - 11:00
場所 :低温科学研究所 3階 講堂
Place:Institute of Low Temperature Science, 3F, Auditorium


発表者: 三浦樹(D2)
Speaker:
題目:黒潮続流域の海面水温偏差場に対する大気の内部変動によらない亜熱帯域の大気応答 ­
Title:Subtropical Atmospheric Response to SSTA in the Kuroshio Extension Region Independent of Internal Atmospheric Variability ­

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発表要旨:

要旨:熱帯の海洋強制に対する高緯度向きの大気応答は、熱帯海洋上の積雲対流活動を起源とするロスビー波列応答に関する研究これまで多くなされてきた。一方で、熱帯外の海洋強制に対する低緯度向きの大気応答は、熱帯外で卓越する大気の内部変動や、熱帯からのテレコネクションの影響により明瞭に抽出する事が難しい。しかしながら近年、南半球においては東部南太平洋における海洋強制が直上の大気のみならず熱帯域まで影響を与え、熱帯大気海洋結合系を変調する可能性が示唆された。  そこで本研究では、北西太平洋に着目し、冬期黒潮続流(KE)域の高温海面水温(SST)偏差場が北太平洋の大規模大気場、特に中緯度―亜熱帯間の大気海洋相互作用に与える影響を調べた。ただし、中緯度大気で卓越する大気の内部変動を考慮し、内部変動によらない頑健な大気応答を調べる為、大気大循環モデル(AGCM)を用いたラージアンサンブル実験を行った。  実験の結果、KE域のSST偏差場に対する冬期の大気応答は主に直上及び下流において大気下層の低SLP偏差と海上風偏差としてみられた。しかしながら、冬期の北太平洋域においてはアリューシャン低気圧(AL)に伴う大気の内部変動が卓越する。この為、AL域で領域平均したSLP強度は、アンサンブルメンバー間の頻度分布において大気応答に比べて幅広いスプレッドを示す。その一方で、KE域から亜熱帯域に至る南東方向へは、大気の内部変動によらない一貫した西風応答をもたらすことが分かった。このような亜熱帯域の西風偏差は、その南の貿易風を弱め、その下のSST上昇に寄与する可能性がある。混合層の熱収支近似を用いると、KE域のSST偏差場強制に伴い生じる亜熱帯域の西風偏差は、その下のSSTを3ヶ月で最大約1度程度上昇させる可能性が見積もられた。これらのAGCM実験で得られた亜熱帯域の西風偏差は、再解析データを用いたラグ回帰の結果とも整合的である。  本発表では、これらの数値実験手法及び解析結果について紹介する。また、現在実行中の全球大気海洋結合モデル(CGCM)を用いた今後の展望を述べる。 --------

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連絡先

松田拓朗
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