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第 400 回 大気海洋物理学・気候力学セミナー のおしらせ

日 時: 4月 24日(木) 午前 09:30
Date : Thu., 24 Apr. 09:30 - 12:00
場所 :環境科学院 2階 講堂
Place:Env. Sci. Bldg. D201

発表者: 若尾和哉(博士後期課程二年)
Speaker:Kazuya Wakao (second-year PhD student )
題目:九州地方における準停滞性の強雨の発生数の経年変化と気圧配置パターンとの関係

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九州地方における準停滞性の強雨の発生数の経年変化と気圧配置パターンとの関係
若尾和哉(博士後期課程二年)
発表要旨:

中緯度帯に位置する日本は、アジアモンスーンや熱帯低気圧をはじめとする様々な総観場により極端降水が発生する地域である。また、ここ数十年で極端降水の発生数は増加し、それに伴い災害リスクが高まっている。そのため、強雨の変動要因の理解は、学術的な意義にとどまらず防災対策の観点からも喫緊の課題である。近年の研究では、海面更正気圧が強雨をもたらす擾乱の特定に有効であることに着目し、将来気候における極端降水の増加率が気圧配置パターンによって異なることを示した。しかし、この結果は過去の強雨の増加を十分に説明するものではない。そこで本研究は、気圧配置の分類を通して、これまでの強雨の発生数の経年変化やその要因の理解を目的とした。 強雨は準停滞性の降水によってもたらされる場合が多い。本研究では、準停滞性の強雨に着目するとともに、それらが多発する西日本の九州地方を対象領域とした。解析には解析雨量データを用いた。解析期間は2006–2023年の6–9月である。JRA-3Qの海面更正気圧に基づき、自己組織化マップを用いて6-hourlyの気圧配置を3種類に分類した。九州地方の遠方または近傍に低圧部が分布する気圧配置(それぞれFL-pattern、NL-pattern)、日本の南海上に太平洋高気圧が張り出す気圧配置パターン(NPH-pattern)である。解析の結果、準停滞性の強雨の発生数の経年変化は、主にNPH-patternにより説明されることが明らかになった。このpatternでは、対流雲の組織化に寄与する風速の鉛直シアが強雨の発生に強く影響することが示唆された。その一方で、FL-patternでは、大気中下層の湿潤大気と大規模な上昇流が、NL-patternでは、台風の有無が強雨の発生に影響を与える可能性が示唆された。強雨の発生やその変動に影響する気象要因は、気圧配置パターンごとに異なる可能性が示された。発表では、今後の研究計画についても言及する予定である。

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連絡先

松田拓朗
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