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第 395 回 大気海洋物理学・気候力学セミナー のおしらせ

日 時: 12月 12日(木) 午前 9:30 - 11:00
Date : Thu., 12 Dec. 9:30 - 11:00
場所 :低温科学研究所 3階 講堂
Place:Institute of Low Temperature Science, 3F, Auditorium

発表者: 三浦 樹(大気海洋物理学・気候力学コース/ D1)
Speaker: Itsuki MIURA (Course in Atmosphere-Ocean and Climate Dynamics / D1)
題目:AGCM実験における黒潮続流域の海面水温偏差場強制とアリューシャン低気圧
Title: Aleutian Low in the AGCM experiment forced by SST anomaly in the Kuroshio and its extension

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AGCM実験における黒潮続流域の海面水温偏差場強制とアリューシャン低気圧
Aleutian Low in the AGCM experiment forced by SST anomaly in the Kuroshio and its extension
発表要旨:

熱帯海洋上の積雲対流活動を起源とする対流圏内のロスビー波列応答に関する研究 は、熱帯大気海洋系から熱帯外の大規模大気循環場へ遠隔影響(テレコネクション) を論じるためにこれまで多くなされてきた。一方、中緯度においては、海洋が大気の 変動に対して受動的に応答していると長年にわたり認識されてきたこともあり、中緯 度における大気海洋結合変動現象が熱帯域を含む全球規模の気象・気候に与える影響 の理解は必ずしも十分ではない。  近年、南半球においては熱帯からの遠隔影響と中高緯度からの遠隔影響が大規模大 気循環場において双方向に影響を及ぼし合うTwo-way teleconnectionsの存在が指摘 され、南大洋の長期にわたる冷却は東部熱帯太平洋域のラニーニャ現象のような冷却 と遠隔的に関連していることが示唆された。一方で、北半球の中高緯度における Two-way teleconnectionsに関する研究は発展途上にあり、熱帯からの遠隔影響を変 調し得る中緯度から熱帯への遠隔影響の理解が全球規模の気候変動メカニズムの理解 に重要である。  そこで本研究では、MIROC6の大気大循環モデル(AGCM)を用いた数値実験を行い、 北半球中緯度海洋の海面水温(SST)偏差場に対する中高緯度の大規模大気循環場へ の影響、及び熱帯方向への遠隔影響を調べることを目的とする。 AGCMにおけるSST下部境界条件として月別の気候値を与えたコントロール実験、及 び、黒潮続流域において+2[K]のSST偏差場強制を与えた強制実験をそれぞれ100ア ンサンブルメンバー実行した。  黒潮続流域の高温SST偏差場に対するアリューシャン低気圧強度への影響に着目す ると、黒潮続流域のSST偏差場がアリューシャン低気圧強度の頻度分布をわずかに負 偏差の方向へ変化させる一方、各アンサンブルメンバーは大気の内部変動に伴いさま ざまな値を取る。しかしながら、アリューシャン低気圧強度のアンサンブルメンバー における上位・中間・下位コンポジットにおいて、熱帯から亜熱帯域にかけての地表 風は常に西風偏差となり、その応答が内部変動のばらつきによらない事が分かった。 また、このような黒潮続流域の高温SST偏差場と、熱帯から亜熱帯域にかけての西風 偏差は、ERA5及びERSSTの再解析データセットで見られる地表風及びSST偏差とも整合 的であった。 発表では、これらの数値実験手法及び解析結果について紹介する。また、これらAGCM 実験を発展させた全球大気海洋結合モデル(CGCM)を用いた実験手法について今後の 展望を述べる。

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連絡先

豊田 威信
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