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第 389 回 大気海洋物理学・気候力学セミナー のおしらせ
日 時: 9月 4日(水) 午後 15:00 - 16:30
Date : Thu., 4 Sep. 15:00 - 16:30
場所 :環境科学院 2階 講堂
Place:Env. Sci. Bldg. D201
発表者: 早稲田 卓爾(東京大学大学院 新領域創成科学研究科/ 教授)
Speaker: Takuji Waseda (Graduate School of Frontier Sciences, The University of Tokyo / Professor)
題目:海氷下波浪の伝搬と海氷の崩壊~オホーツク海、北極海、南極海
Title: Propagation of ocean waves under sea ice and breakup of sea ice ~Okhotsk Sea, Arctic Ocean, and Antarctic Ocean
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海氷下波浪の伝搬と海氷の崩壊~オホーツク海、北極海、南極海
Propagation of ocean waves under sea ice and breakup of sea ice ~Okhotsk Sea, Arctic Ocean, and Antarctic Ocean
発表要旨:
オホーツク海や南極海など季節性の強い氷海では、常に海洋波と海氷が影響しあう氷縁域が広がっている。そして近年地球温暖化の影響で季節性が強くなってきた北極海でも、夏季開放水面が広がり、海洋波が発生し、氷縁域が形成される。一方、南極海では、広大な氷縁域が冬季に形成される。数百キロも広がる氷縁域で強いうねりは減衰し、沿岸定着氷、そして、棚氷を波浪から守る。しかし、夏季南極海では、氷縁域面積が激減し、うねりが直接流氷帯から定着氷に侵入し、定着氷を破壊することが知られている。このセミナーでは、海氷下波浪の伝搬と波浪による海氷の破壊という力学過程に着目し、オホーツク海、北極海、南極海での観測事例を紹介する。2020年北海道大学・海上保安庁によるそうや観測では、海洋波が60㎞におよぶ氷縁域を伝搬するなかでその周波数が大きく増大することを計測した。線形な減衰では説明できず、減衰する波浪の非線形相互作用という未解明の力学過程を示唆する。一方、昭和基地の有る南極リュツォ・ホルム湾では、定着氷が準周期的に崩壊し流出することが知られており、その要因が、外洋からのうねりの侵入と考えられてきた。第64次南極地域観測では、20㎞間隔で21基の波浪ブイを流氷帯と定着氷上に格子状に設置し、侵入するうねりと、海氷流出の計測に成功した。同様の流出が第65次観測でも計測できており、うねりと海氷崩壊の相関は確かなものと言える。そして、2022年10月、北極海カナダ海盆をこの時期では過去数十年で最大の低気圧が通過する。広大な氷盤が1夜にして崩壊し、そして、融解が促進されたと考察した。これら3つの事例を中心に波浪海氷相互作用の研究紹介を行う。
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