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第 384 回 大気海洋物理学・気候力学セミナー のおしらせ

日 時: 5月 2日(木) 午前 09:30
Date : Thu., 2 May. 09:30 - 12:00
場所 :環境科学院 2階 講堂
Place:Env. Sci. Bldg. D201

発表者: 豊田 威信(低温科学研究所/ 助教)
Speaker:Takenobu Toyota (Institute of Low Temperature Science / Assistant Professor)
題目:ドローンで探るオホーツク海南部氷縁域の融解過程­
Title: Melting processes of the marginal ice zone observed with a drone in the southern Sea of Okhotsk­

発表者:河谷 芳雄(地球環境科学研究院/ 准教授)
Speaker: Yoshio Kawatani (Faculty of Environmental Earth Science / Associate Professor)
題目: 大気波動を介して中緯度海洋前線が中層大気循環へ与える影響­
Title:Effects of mid-latitude oceanic fronts on the middle atmosphere through upward propagating atmospheric waves ­

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ドローンで探るオホーツク海南部氷縁域の融解過程
Melting processes of the marginal ice zone observed with a drone in the southern Sea of Okhotsk­
豊田 威信(低温科学研究所/ 助教)
発表要旨:

海氷域が全球的に減少傾向にある現在、海氷の融解過程を定量的に正しく 理解することは益々重要になっている。しかしながら、観測の困難さもあって 今でも未解決の課題である。特に季節海氷域で鍵を握るのが氷縁域の氷盤分布と 考えられる。これは同じ海氷量であっても氷盤が小さいほど表面積が大きく 海洋から熱を効率よく吸収して融解するためである。通常、海氷域は様々な 大きさや形を持つ氷盤の集合体から構成されており、氷盤の分布状況は 融解過程のみならず、海氷の力学過程にとっても重要なパラメータの一つ という認識が確立しつつあるものの、氷盤分布の形成過程や特徴については 未だ試行錯誤の状況にある。特に融解過程が直截的に影響を反映している であろう10m以下の小さな氷盤の特徴は、観測の困難さもありデータが不十分である。 そうした状況の中で近年ドローンの観測技術の向上に伴い、小さな氷盤の計測を行う 可能性が拓かれた。毎年2月に巡視船を用いて実施しているオホーツク海観測に おいても数年前からドローン観測を取り入れており、2020年2月にようやく本目的に 適した海域での観測が実現した。観測時の概況は大気、海洋ともに比較的穏やか であり、融解の影響を見るのに適した状況であった。そこで、本セミナーでは 得られた解析結果から推測される小さな氷盤の特徴や融解過程について議論する。

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大気波動を介して中緯度海洋前線が中層大気循環へ与える影響
Effects of mid-latitude oceanic fronts on the middle atmosphere through upward propagating atmospheric waves
河谷 芳雄(地球環境科学研究院/ 准教授)
発表要旨:

2000年代初めのころまでは、熱帯域では海洋が大気に対して能動的、中緯度では 海洋は大気に対して受動的であると認識されてきた。その後、最新の人工衛星観測や 高解像度数値モデル実験から、中緯度の海面水温の大きな水平勾配が見られる海洋前線 とよばれる領域で、海洋が大気に対して能動的に働き、対流圏の傾圧不安定波や 降水活動を変調させることが分かってきた。ところで大気波動は運動量を対流圏から 中層大気(成層圏・中間圏)へ運び、砕波する際に持っている運動量を背景場に渡す ことで中層大気大循環を駆動している。傾圧波や降水は大気重力波(大気波動の一種) の主要な励起源である故に、海洋前線が大気重力波を介して、遥か上空の中層大気まで 影響を与えているのではないかと考えた。本研究では高度約100kmまでを含む大気気候 モデル(MIROC-AGCM)を用いて、海洋前線が有・無の実験を行い、両者を比較することで 海洋前線が中層大気循環に影響するかどうかを調べた。海洋前線有の実験では、中緯度 海洋前線付近で傾圧波活動・降水活動が活発で、そこから発生した重力波が中層大気へ 伝播する様子が見られた。一方で海洋前線無の実験では、傾圧波活動が著しく弱まり、 振幅のより小さい重力波が励起されていた。海洋前線有の実験では無の実験に比べて 成層圏~中部中間圏で大気波動による西風減速が有意に大きく、より現実的な 中層大気循環の構造をしていた。これらの結果は、中緯度海洋前線が大気波動を介して 中層大気大循環に影響を与えていることを示すものである。 ※参考文献 Kawatani, Y., H. Nakamura, S. Watanabe and K. Sato, 2024: Effects of mid-latitude oceanic fronts on the middle atmosphere through upward propagating atmospheric waves, Geophys. Res. Lett., 51, e2024GL108262, https://doi.org/10.1029/2024GL108262

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連絡先

豊田 威信
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