****************************************************************************************************************

第353回 大気海洋物理学・気候力学セミナー のおしらせ

日 時:10月14日 (木) 10:30 - 12:00
Date :Thu., 14 Oct 10:30 - 12:00
ツール:Zoom (Online)
Tool :Zoom (Online)

注意事項 :Zoomのミーティング情報が必要な場合は下記のメールアドレスまでお問い合わせください。
Note :If you need Zoom meeting information, please contact us at the email address below.

発表者:長谷川 拓也(大気海洋物理学・気候力学コース/研究員)
Speaker:Takuya Hasegawa (Faculty of Environmental Earth Science/Research associate)
題目:アルゴフロートを用いた冷水渦周回観測が示す春季海洋亜表層昇温­
Title:Springtime oceanic subsurface warming observed using Argo profiling

****************************************************************************************************************

アルゴフロートを用いた冷水渦周回観測が示す春季海洋亜表層昇温­
Springtime oceanic subsurface warming observed using Argo profiling
長谷川 拓也(大気海洋物理学・気候力学コース/研究員)
発表要旨:

海洋は大気と比べて熱的慣性が非常に大きく、特に大気と直接熱交換を行 う海洋表層は気候システムにおいて「熱貯め」として重要な役割を担っている。 しかしながら、全球海洋に数千個規模で存在する海洋中規模渦(e.g., Faghmous et al.2015)が、海洋の熱吸収に果たす役割は未解明である。 そこで、谷本研を中心とした研究グループでは、海洋中規模渦が関係する混合層 と亜表層の熱交換プロセスを解明する第一歩として、黒潮続流南方海域において、 3基の無人海洋観測フロート(アルゴフロート)を用いて、海洋中規模渦の一種で ある冷水渦に対して観測を行った。 アルゴフロートが1つの冷水渦の周りを2020年3月から同年6月にかけて3周する 間に捉えた水温時間変化を調べた結果、混合層が深まる1周目(3月)から2周目 (4月)にかけて、亜表層の350dbar付近にピークを持つ正の水温時間変化率が 見られた。一方、3周目(5月から6月)においては、混合層が浅化し、春季から 発達する浅い季節躍層が見られ、大気と海洋亜表層の熱交換が遮断された状況と なっていた。亜表層が大気と遮断された春季の3周目においても、亜表層水温は 1周目よりも高い値を示す。1周目から3周目の亜表層水温変化率に対応する冷水 渦領域の海洋貯熱量変化率は、1 X 10^19J/年と見積もられる。これは、歴史 的海水温データから算出された全球海洋亜表層の過去約50年間の海洋貯熱量変化 率(Levitus et al.2012)の約2%に相当する。したがって、観測された冷水渦 の亜表層昇温が大気から海洋への熱吸収と関係しているのならば、全球海洋の渦活 動度の長期変調は、全球海洋の熱吸収を変調させることによって長期気候変動 (たとえば、2000年以降の地球温暖化停滞;e.g., Kosaka and Xie 2013) に対して無視できない影響を与えるだろうと考えられる。

----------
連絡先

安成 哲平
mail-to: t.j.yasunari__at__arc.hokudai.ac.jp
※ __at__ は @ に置き換えて下さい。