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第272回 大気海洋物理学・気候力学セミナー のおしらせ
日 時: 7月 16日(木) 午前 09:30
場 所: 環境科学院 2階 D201
発表者:谷本陽一 (地球環境科学研究院/教授)
Speaker: Youichi Tanimoto (Faculty of Environmental Earth Science/Professor)
題名:東部熱帯太平洋と熱帯大西洋の海面水温偏差場に見られる南北ダイポール変動とその将来変化
Meridional dipole SST variability in the eastern tropical Pacific and tropical Atlantic
and its future change.
発表者: 宮本雅俊 (東京大学大気海洋研究所海洋大循環分野/博士課程)
Masatoshi Miyamoto (Atmosphere and Ocean Research Institute, The University of Tokyo/Doctoral course)
題名: 黒潮続流南方海域における深層流の中規模変動
Mesoscale variability of deep currents south of the Kuroshio Extension
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東部熱帯太平洋と熱帯大西洋の海面水温偏差場に見られる南北ダイポール変動とその将来変化 (谷本陽一 Tanimoto Youichi) 発表要旨:
熱帯大西洋と東部熱帯太平洋では,熱帯収束帯(ITCZ)が赤道の北側に形成されること, ITCZに吹き込む南東貿易風により赤道域に舌状冷水帯が形成されること,ITCZの出現緯度 と舌状冷水域の海面水温にはほぼ1年周期の季節変化が見られことなど,気候学的平均場 には多くの共通点がある.一方,年々変動場では,熱帯大西洋にはAtlantic Ni.ANqoとも呼 ばれる舌状冷水域の年々変動に加えて,赤道を挟み水温偏差が異符号となる南北ダイポー ルも見られる.しかしながら,東部熱帯太平洋ではEl NiNqo/La NiNqaに伴う舌状冷水域の 年々変動が顕著であるため,この海域における南北ダイポールに関する研究成果はあまり 多くない. 2014年春季の時点では,舌状冷水域の海面水温偏差はまだ負であったが,中部赤道太平 洋の水温躍層付近には+4.AN:Cを超える水温偏差が観測され,各国の気象海洋機関による季 節予報は,この亜表層の水温偏差が東部太平洋の海面に露出して,大規模なEl NiNqoイベ ントが発生すると予測していた.しかし,実際には舌状冷水域の海面水温偏差は正に転じ たものの,予測されたほど大規模なイベントにはならなかった. El Ni.ANqoの発達が阻害された要因にはいくつかの候補が挙げられているが,2014年春 季の海面水温偏差場が赤道の北側(南側)で正(負)となる南北ダイポールであったことも要因 の1つと考えられている.赤道を挟んだ南北ダイポールの形成には大気海洋結合系として の風・蒸発・海面水温(Wind-Evaporation-SST:WES)フィードバックが大きな役割を果たす と考えられているので,2014年春季のダイポールに伴う赤道南側での海上風東風偏差がEl- NiNqoの発達阻害に寄与している可能性がある. 今回は,特定のEl Ni.ANqoイベントの発達阻害の要因からは少し視点を離して,東部熱帯 太平洋と熱帯大西洋域における南北ダイポールの時間変動特性について調べたことを紹介 する.
黒潮続流南方海域における深層流の中規模変動 (宮本雅俊 Miyamoto Masatoshi)発表要旨:
黒潮続流南方海域における深層流の中規模変動の構造や発生、伝播メカニズムを明らかに するために、先行研究と比べて高密度の係留観測を実施するとともに、過去の係留観測デー タと高解像度海洋大循環モデルの解析を行った。 本研究では、1970 ? 80年代に係留観測が繰り返し実施された本州南東のB点 (30°N, 147°E) において、2014年5月より1年間半にわたる係留観測を実施中である。B点は北西太平洋海盆 の南西部に位置し、水深は約6,200 m で海底地形は比較的平坦である。係留系は中規模変動の 構造を捉えるために、東西・南北幅がいずれも100 km の3×3の菱形状に配置し、鉛直方向に も深さ3 km から6 km の4深度に流速計を設置した。係留系は2015年10月に回収予定である。 高密度係留観測で捉えられる中規模変動の特性を把握するための予備的解析として、B点付近 で1978 ? 85年に行われた9回の係留観測結果を統合的に解析した。1年以上にわたる連続観測が 行われた3測点において、深さ5,000 mでの流速のパワースペクトル密度は45 ? 70日周期に大き なピークを示した。RB点の南北流速でパワースペクトル密度が最も大きな値を示した59日周 期の位相差から求めた波数ベクトルは順圧地形性ロスビー波の分散関係を満たすと考えられた。 中規模変動の発生、伝播メカニズムを明らかにするため、COCOモデル (Hasumi, 2006) に基 づく渦解像の全球海洋大循環モデルのアウトプットを解析した。モデルでもB点付近では45 ? 70 日周期の変動が卓越し、モデルは深層の中規模変動をよく再現していた。45 ? 70日の周期帯に おいて、B点のすぐ北で西方伝播してきた変動が強化されており、そのエネルギーはB点の北東 方向の黒潮続流域から来たと考えられた。
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