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第 171 回 大気海洋物理学・気候力学セミナー のおしらせ
日 時: 6月 28日(木) 午前 09:30
場 所: 環境科学院 2階 講堂
発表者:大島 和裕 (地球圏科学部門 大気海洋物理学分野 研究員)
題 目:地球温暖化が極域の正味降水量に与える影響
発表者:青木 茂 (大気海洋相互作用分野 准教授)
題 目:南極底層水の特性変化とケルゲレン海台沖における底層水輸送
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地球温暖化が極域の正味降水量に与える影響 (大島 和裕) 発表要旨 :
IPCC第4次報告書(AR4)では,北極域おける気温上昇がもっとも顕著であり,21 世紀終わりに2.8-7.8Kの上昇を予測している(A1Bシナリオ)。また両極域では 降水量が増えると予測している。この増加に伴って正味降水量(降水量と蒸発 量の差)は増加する。この正味降水量は,海氷や積雪,氷床の変化に関わるた め,極域水循環にとって重要な要素である。 本研究ではIPCC AR4実験での水蒸気輸送プロセスの再現性と温暖化時の影響を 評価した。更に温暖化時の変化の原因について調べた。17のモデルによる現在 気候再現実験とSRES A1Bシナリオに基づく温暖化実験の結果において,極域特 有の幾つかの水蒸気輸送の特徴がモデルで再現されているかどうか確認をする。 極域への水蒸気輸送を決める擾乱輸送はmoisture factorとeddy factorで近似 できる(Oshima and Yamazaki, 2006)。この特徴が現在気候でも温暖化時におい ても成り立つと仮定して再現性の評価を行った。 評価の結果,4つのモデルで水蒸気輸送プロセスの再現性が良いと判断できた。 この4つのモデルの結果よると,21世紀終わりには北極域で水蒸気輸送が北半 球の夏に大きくなり,南極域では南半球の冬季の終わりから春にかけて大きく なる。また両極の水蒸気輸送の増加は水蒸気量の南北経度が強まるためである ことがわかった。
南極底層水の特性変化とケルゲレン海台沖における底層水輸送 (青木 茂) 発表要旨 :
南極大陸沿岸では、陸棚水と周極深層水が混合して世界の大洋で最も重い南極底層水 が生成される。南極底層水は地球規模の子午面循環を担っており、極向きの熱輸送や 淡水や二酸化炭素などの物質循環を通じて、気候システムにおける重要な位置を占める。 近年、南極底層水の水塊特性に顕著な変動が現れていることが明らかになってきた。 日本が関わってきた観測に基づいて、変動の地域的な特性について調べた。データは 十分ではないが、変質傾向には海盆ごとに相違がみられる。ロス海の底層水は淡水 化・暖水化傾向が、アデリーランド沖では30年程度の淡水化・やや冷水化傾向がみら れた。ウェデル海東部では暖水化傾向が見られ、これはここ十年程度の暖水化 (Fahrbach et al, 2004)と整合的である。いずれの海域でも底層水の密度は低下傾 向にある。酸素同位体比の変動から、ロス海での低塩化傾向には氷床融解の影響が強 く現れている可能性が考えられる。 南極底層水が低緯度側へ輸送される過程を調べる一環として、オーストラリア-南極海 盆の西岸域での底層水輸送を調べた。この海域西岸境界での赤道向き底層水輸送は約 20Svであったが、同時に顕著な再循環が見られた。この再循環内部では非常に鉛直一 様な水塊特性が確認できる。こうした流れは、閉じた等層厚線の内部で生じる再循環 として説明できる可能性について検討する。
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