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第 169 回 大気海洋物理学・気候力学セミナー のおしらせ

日 時: 4月 26日(木) 午前 09:30
場 所: 環境科学院 2階 講堂

発表者:古関 俊也 (大気海洋物理学・気候力学コース D3)
題 目:黒潮続流域における中規模SST偏差が駆動する大気境界層内循環

発表者:池田 元美 (統合環境科学部門 広領域連携分野 教授)
題 目:北極海の海氷分布を決める太平洋から大西洋への通過流 : うそかまことか

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黒潮続流域における中規模SST偏差が駆動する大気境界層内循環 (古関 俊也) 発表要旨 :

  
     冬季の黒潮続流域における中規模 SST 偏差に対する大気境界層の応答は多く 
   の観測データや衛星データから明らかになっている。 特に SST 偏差が正(負) 
   の上の海上風応答は乱流混合によって西風(東風)偏差が見られるという鉛直混 
   合メカニズムによって説明されている。 しかし、黒潮続流域における中規模 
   SST 偏差に対する大気境界層の循環が力学的にどのように駆動されているかは 
   観測データや衛星データから見積もることは難しく、 系統的に説明はされて 
   いない。 そこで本研究では高解像度大気大循環モデル(AGCM)を用いて冬季の 
   黒潮続流域における中規模 SST 偏差によって励起される大気境界層内の循環 
   をより力学的な観点から検証し、そのメカニズムの理解を試みる。 
  
     本研究で用いた大気モデルは東京大学気候システム研究センター/国立環境研 
   究所(CCSR/NIES)のAGCM(version5.6)であり、 解像度は T213L30 である。 初 
   期値をECMWF再解析データの2006年1月の月平均値で与え、 20日間の時間積分 
   を行った。 
  
     モデル出力の平均場に対して、 約10°×5°の水平ガウシアンフィルターを用 
   いて、中規模SST偏差と同じスケールの風速場を抽出したところ、黒潮続流域 
   で正(負)の SST 偏差上で海上風は西風(東風)偏差が見られ、 SST 偏差にとも 
   なう大気場の応答が明確に示された。 同じスケールの鉛直拡散係数を抽出し 
   たところ、 大気下層で明確な違いはなく、 大気下層では乱流混合はあまり活 
   発ではないことがわかった。 そこで西風偏差の Tendency に対してBudget解析 
   を行ったところ、 乱流混合は西風に対してDrag項としてはたらいており、 気 
   圧傾度力、 水平移流などによって加速領域が決まるものと考えられる。 これ 
   らの加速項の位相を決めるものは何かについて、 今後の解析が必要である。 
  

北極海の海氷分布を決める太平洋から大西洋への通過流 : うそかまことか (池田 元美) 発表要旨 :

    1960年以降の北極海海氷減少の主たる原因は地球温暖化であり、 氷・アルベド 
  ・フィードバックによって加速されていることは広く受け入れられている。 こ 
  れに加えて、 極渦の強化と雲の増加も相応の役割を担っている。 10年程度の 
  周期を持つ海洋分布と北極海内部構造の変動は、 極渦の変動(北極振動)による 
  ところが大きい。 一方、 1970年あたりの塩分低下(Great Salinity Anomaly)、 
  そして1990年後半以降の太平洋側における海氷減少は、 その原因が解明された 
  とは言いがたい。 
  
    北極海をはさむ太平洋と大西洋の北端で海面水位の差があると、 北極海を通路 
  とする流れが生じ、 北極海の海氷分布にも影響が出るとする考えに基づき、 
  ベーリング海とグリーンランド海の海氷データ、 海面高度計データ、 海様大 
  循環を決める大気圧分布データを解析した。 1970年前後の GSA の直前と1990 
  年以降、ベーリング海の水位が上昇しており、 その結果として太平洋から大西 
  洋に向かう流れが生じ、 北極海の太平洋側で海氷が減少した可能性がある。 
  この仮説を証明するには、潮位データを解析する、あるいは steric height と 
  水位の変動の差を作り出す要素、 例えば風応力が海洋循環に与える影響などを 
  調べなければならない。 
  
  

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連絡先

深町 康 @北海道大学低温科学研究所
寒冷海洋圏科学部門 海洋動態分野
mail-to:yasuf@lowtem.hokudai.ac.jp / Tel: 011-706-7432