受け入れ可能人数:2名
専門分野:海洋物理学、海洋・大気の数値シミュレーション
主な研究対象:
(1) 内部波・渦・不安定・潮汐等による混合・輸送過程
混合過程、特に等密度面を横切る混合は、海洋循環の基本的要素です。時空間ス
ケールは小さくとも、熱塩循環・物質循環等を通して海盆~全球スケールの過程
に影響します。しかしながら、時空間スケールが小さい故に、直接観測やシミュ
レーションが難しく、未だに分かっていないことが多くあります。そんな混合過
程や、小さい空間スケールにおける輸送過程について、数値シミュレーショと観
測、そしてそれらに基づく理論的考察から研究しています。
具体的には、内部波や渦、そこから生じる力学的不安定、それらを生み出す潮汐
や密度フロントに注目しています。こうした過程は海中で激しくダイナミックな
運動を引き起こしていて、見ているだけで楽しくなります。例えば内部波だと、
速い潮流が海底山脈上を登り駆け下り、海水が持ち上げられ押し下げられること
で生じたりします。密度成層があると、持ち上げられた海水は周囲より重く、押
し下げられた海水は周囲より軽くなるので、浮力が働いて海水を元の深さに戻そ
うとし、その結果、海洋内部に浮力(重力)を復元力とした波(内部波)が生成
されます。この内部波は海域によっては数100mほどの波高になり、海岸に打
ち寄せる波のように砕波し、密度不安定や力学的不安定を介して激しい乱流混合
を引き起こします。
(2) 大気・海洋・物質循環モデル
主にオホーツク海周辺地域(環オホーツク域)から北太平洋を対象に、海盆スケ
ールの海洋大循環や物質循環、海面近くの大気過程についても取り組んでいます。
環オホーツク域の海洋は、海氷生成や非常に強い潮流に伴う熱塩循環が生じ、北
太平洋に多大な影響を与えています。この熱塩循環は物質循環ひいては生態系に
も影響していると考えられています。また、夏季のオホーツク海上では下層雲や
オホーツク海高気圧が発達して北日本に影響したりヤマセを引き起こしたりする
など重要な特徴があります。これらについて海洋海氷モデル・大気モデルを用い
てシミュレーションを行っています。
ウェブサイト http://wwwoc.lowtem.hokudai.ac.jp/Nakamura/ に図を少し載せ
ています。
研究と指導の方針:
研究は自分が面白いと思うことやりたいと思っています。何を面白いと感じるか
は人によって様々ですが、私の場合は何故そうなるのか?と現象(数値モデルや
観測の結果)のメカニズムを考えたり、メカニズムに基づいていろいろと想像(
妄想)を膨らませたりするのが好きです。だから好奇心や想像力のある人は大歓
迎です。また、面白いと思えるには背景知識や技術も必要です。つまり想像を膨
らますための種と膨らませ方です。研究をしながら必要なことを学んで、自分な
りの楽しさ・面白さを感じて貰えれば嬉しいです。
具体的なテーマは、上の(1)(2)それぞれについて沢山ありますので、相談して決
めていければと思います。それ以外のテーマでも構いません。数値モデルを動か
すこと、いじることに興味のある人、式(理論)をいじってみたい人、観測して
みたい人、いずれも歓迎です。興味のある人は話をしに来て下さい。部屋は低温
研研究棟329号室(正面の建物)です。期間中に数回出張等があるので、都合の
良い日時を予めメールで聞いて下さい。
ちなみに、これまでの学生さんのテーマは次のような感じです。
・渦と内部波の相互作用
・強い潮流による渦対の形成とその後の時間発展
・千島列島域における潮汐混合の時間変化が熱塩循環に及ぼす影響
・潮流により生成された大振幅風下波が引き起こす不安定と鉛直混合(博士論文)