2009年水産庁照洋丸調査航海

こんにちは。谷本研の三木です。2009年1月15日から2月13日まで水産庁調査船「照洋丸」に補助調査員として乗船し、黒潮親潮混合水域でゾンデによる大気の鉛直構造の観測と海洋観測を行いました。今回は船上での生活、観測について簡単に報告したいと思います


1月13日-1月14日〜観測準備〜

この日は観測の準備をします。特に海の上の観測では準備を念入りにしておかないと観測がうまく進まない場合があります。この2日間は観測で問題が起きないよう、観測機器の設置や観測のガイダンスを行います。

ゾンデの受信機の設置 アンテナの設置" ヘリウムの積み込み
ゾンデの受信機を設置しているところです
ゾンデからの電波を捉えるアンテナの設置です
バルーンを膨らませるヘリウムを積み込みます

マストなどの高所での作業は照洋丸の乗組員の方に手伝っていただきました。このように観測準備は多くの人の協力がないとできません。


1月15日〜出航日〜

いよいよ出航です。多くの関係者が見守るなか、岸壁を離れて行きます。

出航 タグボート 東京湾
岸壁からの見送り
タグボートに引っ張ってもらい
東京湾へ。この日は天気に恵まれました

この日の昼食はカレー。船内では僕ら調査員と船長さんを始めとする乗組員さんとの対面式が行われました

船の上での観測は24時間体制。乗組員も調査員も交代で観測にあたります。私は真夜中12時からお昼の12時までの担当でした


海洋観測

いよいよ調査が始まります。調査船による観測はゾンデによる大気観測の他、CTDという観測機器を沈めて海洋水温などを調べたり、実際に各深度で採水して海水に含まれる、塩分や酸素の濃度を調べたりします。さらに海洋の表層の中の乱流をMSPという観測機器を使って調べるなど、観測は多岐にわたります

ドライ研究室 MSP MSP_setting
船内の研究室です。ここから観測状況を見ながら指示します
これがMSPです。
コードを付けて沈めていきます

ゾンデによる観測

いよいよソンデ観測です。ゾンデというのはバルーンに気圧や気温、湿度をはかるセンサーをつけて飛ばし、センサーの位置などの情報を得ながら上空の風や大気の状態を調べる機械です。

天幕 放球 荒天
ゾンデは船尾のデッキで天幕を張って飛ばします
放球直後。あっと言う間に空に消えて行きます
海が荒れているときは本当に大変です…

観測は甲板にいる乗組員、調査員と操舵室にいる航海士さん達、そして研究室のオペレーターが連携しながら行っていきます。意思疎通がうまくいかないと観測はうまく行きません。また観測は思いもよらないトラブルがよくあります。例えばセンサーの不具合、海況模様などで予定通りに進まないときもあります。ソンデの場合、センサーがよくなかったり、バルーンが破裂するなどのトラブルがありました。しかし乗組員さん、僕以外の調査員の方の協力のおかげで、今回はいいデータが取れたと思います


船内生活

約1ヶ月の船上生活についてお話します。今回の観測は個室が与えられました。生活する船の移住区は航海士、機関士などの「士官」と「乗組員」の階級で分けられており、使用する風呂や食堂の席などは分けられています。朝食は7:30、昼食は11:30、夕食は16:30です。食事は量が大きく、メニューも豊富です。司厨の方がおいしい料理を作ってくれます(ずっと船酔い気味の僕にとっては量が多かったかな)。昼ご飯には必ず肉が出てきて魚が出てきません。夕食と朝食にはお魚が出てきます。僕は夜から昼だったので「朝ごはん」がありません。昼ごはんが「夕食」になります。一方、昼(12時)から夜(24時)の方は昼食が「朝食」になるため、「朝」からステーキやとんかつなどから一日が始まることがあります

世間で起こっているニュースは主にファックスの新聞で知ります。新聞は食堂の本棚に掲示され、政治や社会のほか、紙面の下のほうには「どこどこの海域で海賊が出た」とか、「北緯…、東経…でミサイルの射撃訓練があるので警戒せよ」など陸の上で普段聞かないニュースが掲載されています。洗濯は外に干せないため乾燥機で乾かします。また燃えるごみは船内の焼却炉で燃やします。

居室 デッキ 虹
僕の居室です。洗面台、ソファー、テレビ、クローゼットなどが備えられてます
晴れた日は気持ちがいいです。
観測海域はどこを見ても海。漁船が操業してたり、鯨が潮吹いたり、虹が出たり…

僕は船に弱かったらしく(長距離フェリーでは平気だが)、出航して1週間後くらいに猛烈な船酔いに襲われ、海から手荒い「洗礼」を受けました。荒天時は寝ていても後頭部を押さえつけられるような猛烈な揺れにあいました



観測を終えて

観測を終え、陸に上がってしばらく経ちます。現在は得られたデータを解析 中です。船での生活は船酔い以外はいい思い出です。指導教員からは「私より 立派なseamanになった」と言われました。乗組員の方は親切で、観測のサポートしてくださいました。今回の調査航海は僕にとって本当に貴重な体験でした。乗組員の方、調査員の方に厚く感謝いたします



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