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第 283 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ
日 時:2022/10/18(火) 14:00 -- 15:00
ツール:Zoom
発表者:田中 陸渡
題 目:観測データに基づくPolar Low-海洋間の相互作用の調査
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観測データに基づくPolar Low-海洋間の相互作用の調査(田中 陸渡)発表要旨:
Polar Low(PL)は、よく知られる温帯低気圧や熱帯低気圧と同様に低気圧の一種 であるが、主に冬季の中高緯度海洋上で発生し、水平スケールが約200–1000km と比較的小さいという特徴を持つ。また、PLは海上で急速に発達し、強風や大雪 を伴うため、社会的な影響も大きい現象であることから、PLの発生・発達の要因 を明らかにすることは重要である。PLの発達についてはこれまでに、傾圧性や海 面熱フラックス、大気中での凝結に伴う潜熱の放出など、複数の発達メカニズム が提唱されている。いくつかの先行研究では、PLの発達に海洋が重要な役割を担 うことに着目し、PL-海洋間の相互作用について研究を行っている。Saetra et al. (2008)はその1つであり、熱帯低気圧で知られているような海洋からの負のフィ ードバックに加え、塩分によって成層された水温の逆転層を伴う海域をPLが通過 する際に、海洋内部での混合が海面水温(SST)を上昇させることでPLを強化す る正のフィードバックの可能性を示唆した。また、大気海洋結合モデルを用いた 数値実験から、PLの通過に伴うSSTの上昇がPLの発達に寄与したことが確認され ている(Wu,2021)。これらの事例的な研究はPLの発達に、海洋の鉛直構造の特徴 が関係することを示唆するが、PLの通過に伴うSST変化や海洋表層の鉛直構造と の一般的な関係は明らかにされていない。 そこで、本研究は、PL-海洋間の相互作用の実態を明らかにすることを目的とし、 1.PLの通過に伴うSST変化を明らかにすること、2. SST変化と海洋表層の鉛直構 造の関係を明らかにすること、3.PLへのフィードバックの証拠を示すこと、を目 標とする。 今回の発表では、PLの通過に伴うSSTの上昇と低下が見られた2事例について、ス カラー海上風(WND)、SST、海洋表層の水温・塩分分布を用いて、海上風の変化と SST変化、SST変化と海洋表層の鉛直構造の関係を調査した結果を議論する。SST の上昇事例は、Saetraet al.(2008)でSSTの上昇が報告された2004年12月18日の 事例を調査した。 本研究ではさらに、同事例のPLを中心とした総観場について、17日-18日のSSTと WNDの差の空間相関を計算し、正の相関(r=0.42)があったことがわかった。さ らに、17日の海洋表層の鉛直構造を調査したところ、5つのプロファイルが得ら れ、その全てのプロファイルで、水温の逆転層が存在していたことがわかった。 これはSaetraet al.(2008)で提唱されたPLの通過に伴うSST変化と海洋表層の 鉛直構造の関係を支持することを意味する。また、これと同様の調査を低下事例 に対して行った。本発表では、これらの調査の詳細、及び今後の展望について発 表する。
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