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第 282 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ

日 時:2022/10/18(火) 13:00 -- 14:00

ツール:Zoom

発表者:宮田 愛美

題 目:地表気温における外部変動の季節別地域特性の評価

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地表気温における外部変動の季節別地域特性の評価(宮田 愛美)発表要旨:

        全球平均の地表気温は1970年以降急激に昇温しており地球は温暖化している。こ
        の観測された変化は自然起源の要因のみでは説明できず地球温暖化の大部分は人
        為起源の温室効果ガスの増加が原因であると指摘されている(IPCC, AR6)。こ
        のような人為起源と自然起源の外部強制力の変化によって主に地球温暖化のよう
        な気候変動は引き起こされるが、気候変動の要因は外部強制力以外にも存在する。
        外部強制力による外部変動に対して、ENSOなどの大気海洋系内部の力学により生
        じる内部変動がある。したがって地球温暖化を詳細に理解するにはその要因を外
        部変動と内部変動に分ける必要がある。これらの影響を分ける手法としては線形
        トレンドが広く使われているが、外部変動は直線で表すことができないためこの
        手法には問題が生じている。線形トレンドを用いて地表気温の季節別地域特性を
        調べた研究は複数あるが、先行研究の間で解析期間が異なるため昇温の要因も異
        なって解釈されており、内部変動の影響を強く受けた結果が出ている研究(
        Cohen et al., 2012)もある。このような線形トレンドの問題を改善するため気
        候モデルを用いて外部変動と内部変動を切り分ける手法がいくつか提示されてき
        ている。これらの手法は線形トレンドより適切に10年規模の内部変動を抽出でき
        るという研究結果がある(Xu and Hu, 2018; Miyaji et al., 2022)。しかしこ
        のような先行研究はすべて時間・空間スケールの大きい現象への適用例で、季節・
        地域スケールでこれらの手法を適用した例はない。そのため、本研究では地表気
        温の季節別地域特性に複数の外部変動推定法を適用し推定した外部変動を評価す
        ることを目的とする。今回は気候モデルMIROC6の50メンバー平均を外部変動の基
        準とし、観測データはHadCRUT4を使用した。手法の比較は1. 昇温量が負になら
        ないか、2. 解析期間によって昇温分布が変わらないか、3. 大規模火山噴火の影
        響が再現されているかという3つの観点から行った。その結果、いずれの観点で
        も気候モデルを用いた手法2つが他の手法と比べてよいということがわかった。
    

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北海道大学大学院 環境科学院
地球圏科学専攻 大気海洋物理学・気候力学コース D1
太田 聡 (Satoshi Ota)
E-mail:ota_satoshi[at]ees.hokudai.ac.jp
([at]を@に置き変えてください)