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第 281 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ

日 時:2021/10/27(水) 14:00 -- 15:00

ツール:Zoom

発表者:武田 歩夏

題 目:極低気圧の将来変化について

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極低気圧の将来変化について(武田 歩夏)発表要旨:

極低気圧(Polar Low:PL)には明確な定義が存在しないが,一般的には主に高緯度の海洋で冬季に
発達するメソスケールの低気圧のこととされている。寿命は最大2-3日と短い。しかし,温帯低気圧の
スケールが1000km以上なのに対してPLのスケールは200-1000 kmと小さいが,最大風速が15m/sを
超えることもあり沿岸地域へ与える被害は大きい。そのため,PLの気候学的な特徴が将来どのように変
化するのかを明確にすることが最近PLに関する研究の焦点となっている。
PLの予測に関しては1960年代に極軌道衛星の画像診断が登場するまで起源などは解明されていなかっ
た。現在,PLに関する研究数は増加してきており,モデルを使った研究ではPLは傾圧性に依存性を持つ
ことがわかった(Yanase and Niino2007)。傾圧性が小さいとスパイラルバンド状の雲パターンで
台風のような,傾圧性が大きくなるにつれコンマ状の雲パターンで温帯低気圧のような性質を持つ。解
析を用いた研究も進んできているが,研究対象領域に北極海周辺を選ぶものが性質上多く,システムそ
のものの理解は依然として不足している。広く受け入れられているPLについての定義がないこと,さら
に大気モデルや再解析データの解像度のためにPLを必ずしも上手く表現できていないことがPLの時空間
的な分布や発達メカニズムが解明しきれていない理由として挙げられている。
本研究ではWCRP(World Climate Research Programme:世界気候研究計画)が発表しているCMI
P6(Coupled Model Intercomparison Project Phase 6:大気海洋結合モデル相互比較プロジェ
クトフェーズ6)で用いられている高解像度モデル群HighResMipの1つを使用した。そして,30年間分
のヒストリカルシナリオと将来シナリオを比較し,地球温暖化によるPLの個数・発生領域・強度の将来
変化を明らかにすることが目的である。今回はSLPの結果のみを用いて議論していく。
        
    

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北海道大学大学院 環境科学院
地球圏科学専攻 大気海洋物理学・気候力学コース D1
太田 聡 (Satoshi Ota)
E-mail:ota_satoshi[at]ees.hokudai.ac.jp
([at]を@に置き変えてください)