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第 241 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ

日 時:2016/10/4(水) 15:00 -- 16:00
場 所:環境科学院 D101

発表者:席 浩森(大気海洋物理学・気候力学コース M2)
題 目:対流圏化学再解析データを用いたアジア域におけるオゾン輸送の研究

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対流圏化学再解析データを用いたアジア域におけるオゾン輸送の研究(席 浩森) 発表要旨 :

イントロダクション

Chen et al.(2015)による東南アジアの降水の研究により、北西太平洋の爆
弾低気圧と熱帯東南アジアの気象要素との関連性が解明された。一方で、中緯度
の気象擾乱に伴って、下部成層圏から熱帯対流圏へ空気の輸送があることはよく
知られている(Gettelman et al., 2011)。これらの研究を踏まえ、爆弾低気圧に
伴う、中緯度の下部成層圏から熱帯対流圏へのオゾン輸送について研究を行う。
ただし、熱帯の対流圏においては、バイオマス燃焼や化石燃料の燃焼によるオゾ
ン生成もあるので、解析には工夫が必要である。本研究では、最近公開された化
学再解析データ(TCR-1; Miyazaki et al., 2015)を用いて、アジア域における爆
弾低気圧とオゾン輸送の関係性を調査する。

データ

Trospheric Chemistry Reanalysis (TCR-1)データ(Miyazaki et al., 2015)
は、複数の人工衛星観測データ(OMI, MLS, TES, MOPITT)の同化から推定された
10年間(2005年—2014年)のO3、CO、NOXの濃度のグローバルなデータセットであ
る。予報モデルにはグローバル化学輸送モデル(CHASER)を使い、気象場には
NCEP-DOE/AMIP-II再解析データを使い、同化スキームにはアンサンブルカルマン
フィルタを使っている。

結果

気象場の解析によって、2013年1月13日から20日まで、一つの爆弾低気圧がフィ
リピン北部付近で発生し、北東へ伝播していたことが分かった。最も発達したの
は16日00UTC、場所は北西太平洋北部(カムチャツカ半島南東、中心位置約45ºN,
170ºE)である。なお、2013年1月17〜18日まで、インドネシア・ジャカルタ都心
では豪雨イベントが発生している(Wu et al., 2013)。図1にNCEP-DOEとTCR-1で
作った2013年1月14日12UTCの320K等温位面のO3の濃度分布図を示す。13 日の
00UTCから、20日の00UTCまで、東中国、日本付近から、中国沿岸、台湾に沿っ
て、南シナ海、東南アジアまで、O3の濃度高い領域が見えていた。一方で、同じ
320K等温位面のCO濃度図を見ると、上記O3の濃度の高い領域ではCOの濃度が低
い。従って、この高濃度のO3は、爆弾低気圧とともに、中緯度下部成層圏から輸
送されてきたものと判断できる。また、爆弾低気圧の東方(20º-40ºN,
150º-180ºE)では、COの濃度が高くO3の濃度が低いことも見える。これは爆弾低
気圧の強い上昇気流によって、地表面付近の空気が上空まで輸送されたためと考
えられる。発表では、2005年から2014年まで、10年間の冬季の全ての爆弾低気圧
に伴うオゾン輸送について、統計的に解析した結果を示す予定である。

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連絡先

北海道大学大学院 環境科学院
地球圏科学専攻 大気海洋物理学・気候力学コース
三村 慧 Mimura Satoru
E-mail:s-mimura@ees.hokudai.ac.jp