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第 235 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ

日 時:2014/11/05(水) 15:00 -- 16:00
場 所:環境科学院 D201

発表者:中村 誠吾(大気海洋物理学・気候力学コース M2)
題 目:日本海の海面水温と冬季東アジアモンスーンの経年変化 が低気圧活動の経年変化に与える影響

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日本海の海面水温と冬季東アジアモンスーンの経年変化が低気圧活動の経年変化に与える影響(中村 誠吾) 発表要旨 :

 冬季の日本海周辺における低気圧活動は日本海側の地域の降雨や降
雪に影響を及ぼすことから重要な気象現象の1つである。Yoshiike and
Kawamura (2009) は急速に発達する低気圧(爆弾低気圧)が日本海のSS
Tfront上で活動的になることを示唆した。Iizuka et al.(2013) は
SSTfrontおよび東アジアモンスーンの強度が爆弾低気圧に与える影響
を調査した。その結果、爆弾低気圧の経路がSST front上で高頻度にな
り、モンスーンが強い時には爆弾低気圧の経路が日本周辺に集中するこ
とを示した。しかしながら、日本海SSTおよび東アジアモンスーンの経
年変化が低気圧活動の経年変化に与える影響については示されていない。
したがって、本研究では冬季日本海のSSTおよび東アジアモンスーンが
低気圧活動に与える影響を経年変化に着目して明らかにすることを目的
とする。解析対象期間は詳細なSSTデータが入手可能な1982年冬季(11月
~3月)から2010年冬季までの29年間である。今回の発表では、寿命の短
い例気圧に焦点を当てて日本海のSSTの空間パターンの変動との関係につ
いて述べる。
 まず、JRA-55のSLPを用いて東アジア域における低気圧のトラッキング
を行った。具体的にはSLPが最少となる位置を求めることで低気圧を検出
し、前後の時間の低気圧を接続することで経路を決定する。また、本研究
では低気圧の性質によってSSTの影響の現れ方が異なるという仮説のもと、
検出された低気圧を短寿命(24時間以内)と長寿命(24時間以上)の2つに分
類して解析した。
 短寿命の低気圧および日本海SSTの経年変化について詳しく調べるため
に、それぞれのデータにローパスフィルタ(LPF)およびハイパスフィルタ
(HPF)を施したのちEOF解析を行った。その結果、HPF後の短寿命低気圧の
頻度のEOF1(15%)がSST front上で大きな変動を持ち、HPF後のSSTのEOF2
(19%)が南西―北東のdipole型を示した。このとき、両者のスコア時系列
の相関係数は0.51であった。以上のことから、冬季日本海において寿命の
短い低気圧の頻度の年々変動はSSTの南西―北東のdipole型の年々変動場
と関係していることが示唆された。

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連絡先

北海道大学大学院 環境科学院
地球圏科学専攻 大気海洋物理学・気候力学コース
池川慎一
E-mail:Ishinichi@ees.hokudai.ac.jp