****************************************************************************************************************

第 226 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ

日 時:2013/10/08(火) 15:00 -- 17:00
場 所:環境科学院 D201

発表者:吉村志穂(大気海洋物理学・気候力学コース M2)
題 目:熱帯域の対流活動による気圧場への遠隔作用とそれに伴う大気と海洋の長期変動

****************************************************************************************************************

熱帯域の対流活動による気圧場への遠隔作用とそれに伴う大気と海洋の長期変動 (吉村志穂) 発表要旨 :


 エルニーニョー南方振動 (ENSO)は気候変動の卓越したモードであり、ENSOは北半球の夏の間に発達して
初冬にピークとなり翌年の春に衰退する。ENSOに伴い熱帯域における対流の位置が変化することで、熱帯
の東部太平洋から離れた熱帯域や熱帯外でも大気の変動が生じるという大気のテレコネクションが起こり、
それは海洋にも影響を与える。ENSOに起因する大気のテレコネクションにより生じる気候偏差はENSOピー
ク後の夏まで長引くことが知られている。例えば北西部太平洋での海面高気圧偏差はENSOピーク時 (冬)
に現れ始め翌年の春に最大となり夏まで持続する。またインド洋のSST偏差はENSOピーク後に高くなり、夏
まで持続する。
Xie et al. (2008)などはこの北西部太平洋での高気圧偏差の持続はインド洋のSST偏差の上昇によるもの
であることを示し、インド洋のcapacitor効果と名付けた。capacitor効果とは、エルニーニョのテレコネ
クションがインド洋のSST偏差の上昇を引き起こすことを「キャパシターの充電」とし、エルニーニョの衰
退後、夏まで持続したインド洋の正のSST偏差が周囲に影響を与えることを「キャパシターの放電」と例え
たものである。
本研究の目的はcapacitor効果を引き起こすためのENSOの閾値はあるのか、またエルニーニョ/ラニーニャ
に分けた場合、capacitor効果に与える影響はどのようなものであるのかを明らかにすることであり、方法
としてXie et al. (2008)に従って観測データを用いた解析、および統計的に有意な値を得るため100年間
の計算を行なっているCMIP5のMIROC5 (大気海洋モデル)の解析を行う。
今回の発表では観測とMIROC5の比較を示し、観測とMIROC5の相違点やMIROC5ではcapacitor効果が再現さ
れているのか、またエルニーニョ/ラニーニャに分けた場合にcapacitor効果の影響はどのようであるのか
を示す。

-----
連絡先

北海道大学大学院 環境科学院
地球圏科学専攻 大気海洋物理学・気候力学コース
池川慎一
E-mail:Ishinichi@ees.hokudai.ac.jp