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第 207 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ
日 時:2010/10/26(火) 15:30 -- 17:30
場 所:環境科学院 D201講堂
発表者:平野 和也(大気海洋物理学・気候力学コース M2)
題 目:成層圏突然昇温に伴う空気塊の経路変化に関する研究
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成層圏突然昇温に伴う空気塊の経路変化に関する研究(平野 和也) 発表要旨 :
冬季、極域成層圏において成層圏突然昇温(以下、SSW)という惑星規模の変動が存在する。この変動は1週間で25K以上の昇温を示す。 SSWの発生メカニズムは、惑星規模の波(東西波数1~3)が上方に伝播し、成層圏内において収束することで西風減速が起こり、極向きの 流れと下降流による昇温がもたらされていると考えられている(Matsuno ,1971)。また、SSW発生に伴い極域成層圏において下降流が強化 されることで、オゾンを多く含む大気を対流圏に供給し、物質分布に影響を及ぼすことが考えられる。 本研究では、成層圏における顕著な変動であるSSWと極渦の強化(以下、VI)が対流圏循環に影響を及ぼすこと(Kuroda ,2008)を踏ま え、流跡線解析によりSSW・VI発生時の大気の流れを調べる。目的は現実の空気塊がどのような動きを示すかをSSWとVIの対称的な変動の違い から調べ、成層圏・対流圏間の大気循環の理解を深めることである。 今回の研究発表では、2009年1月下旬に起こった、60K以上の昇温を示すSSW(以下、MSW09)を例として流跡線解析を行い、SSW発生時の 空気塊の移動の様子を調べる。 MSW09は対流圏まで昇温と東風への転換が起こるSSWである。主に波数2の波によって生じており、アラスカにおける上部対流圏のリッジ がMSW09の発生に重要な役割を果していることが示唆されている(Harada et al. ,2010)。 流跡線解析の結果は、子午面上で見ると10hPa付近、北緯50度~80度のあたりでは30hPaほどまで回転をしながら下降していく様子が見えた。 また200hPaから300hPaの対流圏内では北緯60度付近で低緯度に向かいつつ下降していく。 今回の研究結果を踏まえ、今後はVI発生時、または対流圏まで伝播しない場合のSSW発生時と比較する予定。
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