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第 199 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ

日 時:2008年 11月 4日(火) 午後 16:30 〜 18:30
場 所:地球環境科学研究科 A棟 講堂

発表者:石川 泰(大気海洋物理学・気候力学コース M2)
題 目:太陽活動に伴う成層圏オゾン変動が対流圏に及ぼす影響

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太陽活動に伴う成層圏オゾン変動が対流圏に及ぼす影響 (石川 泰) 発表要旨 :

成層圏から対流圏に影響が及ぶことは、近年になってより注目されるようになった。
成層圏の状態から対流圏の数ヵ月先の予報ができる可能性を示唆した研究(Baldwin 
and Dunkerton,2001)もあり長期予報の観点からも成層圏から対流圏へ影響が及ぶこ
とは注目に値する。しかしそのメカニズムについては未解明な部分が多く、解明の
ためにはいかなる状況下で成層圏における変動が対流圏に影響を及ぼすかを明らかに
する必要があると考えられる。

本研究では、太陽活動に伴い変動する成層圏のオゾンに注目して解析を行う。太陽活
動とは11年周期で太陽からくる紫外線や日射が変動する現象で、有意に成層圏の温度
を変動させることがわかっている。先行研究では、太陽活動に変動した成層圏の温度
場が引き金となって、対流圏と成層圏の結合の様子が変化することが示されている
(Kuroda and Kodera 2005など)ため太陽活動に伴い成層圏から対流圏へ及ぶ影響も
変化すると考えられる。

まず、太陽活動に伴い大気場にどれほどの変動が出るかを見積もるために、太陽活動
の指標となるフラックスを使用し、太陽活動を活発期と不活発期にわけてmonthly 
dataのコンポジット解析を行った。すると、全ての月で太陽活動に伴い大気場は有意
に変動しているという結果が得られた。帯状平均東西風については太陽活動に伴って
成層圏から対流圏に下降してくるようにも見える時期もあり今後注目に値すると考え
ている。また、太陽活動に伴う大気の変動の鍵であると考えられる成層圏のオゾンの
みを変えて数値実験を行ったところ、観測とも比較的良い整合性が得られた。
今後は成層圏から対流圏に影響が及ぶことについてさらに細かい解析を進めたい。
特定の時期に絞った時間スケールの短い解析や、オゾンの与え方を変えた数値実験を
予定している。


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連絡先

北海道大学大学院 環境科学院
地球圏科学専攻 大気海洋物理学・気候力学コース
干場康博
E-mail:h-dragon@ees.hokudai.ac.jp