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第 189 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ

日 時:2007年 10月 22日(月) 午後 16:30 〜 18:30
場 所:地球環境科学研究科 A棟 講堂

発表者:森岡 浩 (大気海洋物理学・気候力学コース M2)
題 目:熱帯、亜熱帯における対流圏オゾンの年々変動と長期変動の考察

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熱帯、亜熱帯における対流圏オゾンの年々変動と長期変動の考察 (森岡 浩) 発表要旨 :

 2007年のIPCCレポートによると、人為起源によるオゾン前駆物質の排出は 
 1990‐2000年にかけて、USA、ヨーロッパで減少するものの発展途上国に 
 おいて増加傾向にある。このようなオゾン前駆物質の増加に伴うオゾン変 
 動を捉えるためにオゾンゾンデ観測が北半球中緯度を中心に多く行われて 
 いる。しかし、熱帯・亜熱帯においては観測が少なく、オゾンの年々変動、 
 長期トレンドについてはあまり報告されていない。 
  
 熱帯・亜熱帯は、バイオマス燃焼に伴うオゾン生成が顕著であり、インド 
 ネシアのWatukosekにおいては、エルニーニョである94年および97年に、 
 大規模なバイオマス燃焼と( Fujiwara et al. 1999) と気象場の変化  
 (Chandra et al. 1998) による対流圏オゾンの増加が示唆されている。 
 しかし、97年以降の顕著な対流圏オゾンの増加については議論されていな 
 い。また、長期的な変動については、太平洋南西の低濃度オゾン(20ppbv 
 以下)の出現頻度が高度200hPaを中心とした上部対流圏で増加している 
 (Solomon et al. 2005)ことが報告されており、その原因として対流活動 
 の活発化による可能性が議論されているが、仮説に留まっている。 
  
 そこで本研究では、インドネシア・Watukosekにおける15年間のオゾン 
 ゾンデデータおよび、SHADOZ(Southern Hemisphere ADditional OZonesondes) 
 による熱帯、亜熱帯の9地点の約9年間のオゾンゾンデデータを用いて、 
 オゾンの年々変動、長期トレンドを調べ、その原因を探る。 
  
 インドネシア・Watukosekにおける15年間の対流圏オゾン全量 
 (TCO:Tropospheric Column Ozone)、NINO.3、DMI(Dipole Mode  
 Index)、インドネシアの相対湿度を比較した結果、93年、94年、 
 97年、02年、06年におけるSONのTCOの顕著な増加は、NINO.3と 
 DMIの正の偏差、相対湿度の低下と対応していた。99年‐07年の 
 各高度におけるオゾントレンドは、高度17-22kmに統計的に有意 
 な負のトレンドが見い出され、高度17‐18kmで−4.8±3.8[%/year] 
 であった。この大きな負のトレンドは15年間のトレンドには見られ 
 ず、ここ9年の特徴であった。 
  
 次に、Watukosekを含むSHADOZの10地点の最近9年間のトレンド解析 
 の結果を述べる。対流圏界面付近においては、Watukosek以外の5つ 
 地点(Nairobi、Malindi、Kuala Lumpur、San Cristobal、Paramaribo) 
 でも、統計的に有意な負のトレンドを示した。また、対流圏においては 
 全域で概ね正のトレンドであり、対流圏のオゾンが高濃度であるMalindi、 
 Natalの高度約10-15kmにおいて、統計的に有意で大きな値の正のトレンド 
 を示し、Natalの高度11-12kmで5.0±4.4[%/year]、Malindiの高度12-13km 
 で3.7±2.9[%/year]であった。 
  
 今後は熱帯対流圏界面における東西非一様な減少トレンドの原因、 
 および、南米、大西洋、アフリカの経度帯における上部対流圏の 
 増加トレンドの原因を調査する予定である。 
  
  
  

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連絡先

山本 彬友 @北海道大学大学院環境科学院
地球圏環境科学専攻 / 大気海洋物理学・気候力学コース
mail-to:akitomo@ees.hokudai.ac.jp / Tel: 011-706-2288