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第 170 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ
日 時:2005年 10月 17日(月) 午後 16:30 〜 18:30
場 所:地球環境科学研究科 2階 講堂
発表者:稲飯 洋一 (大循環力学講座 M2)
題 目:cold-trap領域における水蒸気MATCH
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cold-trap領域における水蒸気MATCH (稲飯 洋一) 発表要旨 :
水蒸気は放射的に活性であり、地球の長波放射の波数領域(100ー2500/cm)の 放射収支に大きな影響を持つ。また凝結し雲を形成することでグローバルな 地球放射バランスにも影響する。地球の放射収支において重要な役割を持つ 水蒸気は古くから研究されてきた。 しかし、成層圏の水蒸気は極端に少ないので、その観測は困難であり、成層圏 水蒸気の時間的空間的変動はまだ完全には理解されていない。 Oltmans&Hofmann (1995)はコロラド上空の成層圏における年1%におよぶ増加トレンドを報告したが 、1991年から開始された衛星観測値にはそのような増加トレンドは示されておらず 、人類の持つ最も長期間にわたる2つの成層圏水蒸気データセットが示すトレンド は一致してはいない。 Brewer(1949)が成層圏は非常に乾燥している事をゾンデ観測により発見し、 Brewer-Dobson循環を唱えて以来、成層圏の乾燥を説明しようと様々な仮説が 考えられてきた。 成層圏と対流圏の境界は厚みを持った遷移層であるという 熱帯対流圏界層(TTL)の考えを受け、Holton&Gettelman(2001)は、大気が 水平移動しながらそこを通過する際、低温により脱水が行われ、さらにゆっくり とした非断熱加熱によって徐々により高温位な成層圏へと上昇していく、 「cold-trap」仮説を唱えた。 Hatsushika&Yamazaki(2003)はGCMを用いてTTLにおける大気の平均定常場 における流れをシミュレートし、Holton&Gettelman(2001)の「cold-trap」 仮説の妥当性を示した。 Gettelman et al.(2002)やJensen&Pfister(2004)は モデルを用いてTTL内で水蒸気が凝結して大気が脱水される際に拘わってくる 種々の値をパラメタリゼーションすることで、重力波による気温振動など 各パラメーターが脱水量にどの程度寄与するのかをシミュレートした。 こういった背景の中、SOWERプロジェクトはゾンデ観測によりTTLにおける 脱水過程の理解を得ようと、1998年から観測を行ってきた。そして、2004年 12月ー2005年1月、インドネシア領域において水蒸気ゾンデ「SnowWhite」による 多点同時期観測が行われた。この観測の大きな目的は、同一大気塊を時間間隔 をおいて複数回観測する「MATCH」を行い、「cold-trap」による脱水の証拠を ゾンデデータから示すこと、さらに脱水量と大気が経験した気温の関係を定量化 することである。今回の発表では、合計38回行われたゾンデ観測中MATCHした 数例を紹介し、上記目的達成に向け議論する。
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