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第 164 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ
日 時:2004年 11月9日(火) 午後 16:30 - 18:30
場 所:地球環境科学研究科 C104
発表者:久保川 陽呂鎮 (地球環境科学研究科 気候モデリング講座 修士2年)
題 目:熱帯季節内振動の鉛直構造および東向位相伝搬の物理過程の研究
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熱帯季節内振動の鉛直構造および東向位相伝搬の物理過程の研究 (久保川 陽呂鎮) 発表要旨 :
Madden-Julian振動(MJO)は(Madden and Julian.,1971)によって発見された現 象で熱帯で最も顕著な気象擾乱の一つである。その明確な定義は存在しないが、 30-60日の周期性を持ち、位相速度3-6m/sでインド洋から西部太平洋上を東進 する組織化された雲群である。ただし、季節によっては東進以外の移動を示す モードも存在することが知られている(Wang and Rui.,1990) MJOの発生と東進位相速度を説明しようとした研究として、次のようなものが ある。まずMJOの発生に関しては(Knutson and Weickmann.,1986)が上部対流圏 の循環が次のMJOの発生に重要な因子であることを示し、又、(Hendon and Salby.,1994) は、ケルビン波がMJOの発生エネルギーとなることを示した。位 相速度の問題に関しては、Kelvin WAVE-CISK(conditional instability of second kind)説(Y.Hayashi.,1970)とWISHE説(Wind-induced sarface heat exchange instability:Neelin et al.,1987)がある。しかし、これらの説はい ずれもMJOの位相速度を説明するには不十分なものであった(Hayashi and Sumi.,1986:Chang and Lim.,1988:Woolnough et al.,2000)。一方、Bin Wang はIPRC climate vol 4,No.1,2004の中で境界層摩擦の重要性を示している。し かし、いずれの場合でもMJOの位相速度の問題は未だ解決していないと言える。 これらの理論とは別に(Nakazawa.,1988)はGMS(Geostationary Meteorological Satellite)の雲画像データを解析し、MJOに内在する雲の階層構造を示した。 この論文では、MJOの内部には東進するスーパークラウドクラスター(SCC:対流 結合ケルビン波)があり、さらにその下位構造として西向に移動するクラウド クラスター(CC:対流結合西向き慣性重力波:Takayabu.,1994)があることを示し た。しかし、(Wheeler et al.,2000)のOLR(Outgoing Longwave Radiation)の 時空間スペクトル解析により、MJOにはSCCを伴うような構造が常にあるわけで はなく、SCCはMJOとは独立に存在するものであることが示された。これにより、 MJOという現象がより未知な現象となってしまった。 本研究の目的は、主に赤道帯を東進しているモードに注目して、その発生と移 動および鉛直構造を丹念に調べることにより、MJOという雲群の内部構造およ び、その東向き位相伝搬の物理過程を明らかにすることにある。その際、イン ドネシア海洋大陸、得にスマトラ山脈を挟んだ東と西で、MJOと考えられる対 流雲が別の物理過程によって支配されているのではないか、という仮定に基づ いて研究を進めたいと考えている。今回の発表では、先行研究の紹介と、これ まで進めてきたことを示したいと考えている。
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