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第 163 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ

日 時:2004年 11月8日(月) 午後 17:00 - 19:00
場 所:地球環境科学研究科 講堂

発表者:渡部 洋平 (地球環境科学研究科 大循環力学講座 修士2年)
題 目:熱帯の局所的な海面水温と対流活動の関係

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熱帯の局所的な海面水温と対流活動の関係 (渡部 洋平) 発表要旨 :

  
 熱帯の対流活動はウォーカー循環を駆動するだけでなく中緯度の大気循環も変 
 えることから、気候システムを理解する上で重要な要素である。深い積雲対流 
 は一般に海面水温(SST)が高いところで生じるが、SSTに対して必ずしも線形の 
 関係にあるわけではないことが、過去の研究から報告されている。 
  
 Gadgil et al.(1984)とGraham and Barnett(1987)は対流の指標として使われ 
 る外向き長波放射(OLR)の観測データを用いて、SSTとの関係を散布図で示した。 
 散布図を見るとSSTが27.5℃より高温域でOLR値が急激に低くなる。しかし、 
 SSTが高いときにはいつでも深い対流が生じるわけではなく、SSTが高い時の 
 OLR値には大きなばらつきがある。このことから、OLRとSSTの関係は不連続で 
 あり、SSTが高い時でも大規模循環によって対流が抑制されることを示唆した。 
 Zhang et al.(1993)は月平均のOLRとSSTの関係を密度分布と確率分布によって 
 示した。深い対流とされるOLR値の確率はSSTの増加と共に滑らかに、そして連 
 続的に増加していることからOLRとSSTの関係は連続的であると示唆した。この 
 ように、局所的なSSTと対流活動の関係は未だ解明されているとは言い難い。 
  
 そこで本研究は、より短い時間スケールのTRMMの観測データとERA40のデータ 
 を用いて、局所的なSSTが対流にどれだけ影響を与えるかを力学、熱力学の観 
 点から考察する。対流は成層が条件付き不安定のときに空気塊が浮力を得るこ 
 とで生じる。対流の発生には下層の相当温位が重要であり、下層の相当温位が 
 高いほど条件付き不安定を解消しやすく、対流が発生しやすくなる。また、対 
 流の指標として対流有効位置エネルギー(CAPE)がある。このCAPEは下層の相当 
 温位に強く依存する。今回は、OLRとSSTだけではなく、それらと相当温位や 
 CAPEなどとの対応を調べることで、OLRとSSTの非線形な関係が何によって生じ 
 ているかを議論する。 
  

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連絡先

三角 @北海道大学大学院地球環境科学研究科
大気海洋圏環境科学専攻大循環力学 / 気候モデリング講座
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