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第 160 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ
日 時:2004年 11月2日(火) 午後 16:30 - 18:30
場 所:地球環境科学研究科 C104
発表者:吉倉 佑 (地球環境科学研究科 大循環力学講座 修士2年)
題 目:日本上空におけるオゾン長期減少傾向の解析
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日本上空におけるオゾン長期減少傾向の解析 (吉倉 佑) 発表要旨 :
人為起源の塩素化合物による長期的、化学的なオゾン減少傾向は、極域におけ るオゾンホールとしてよく知られているが、中緯度成層圏オゾンにも減少傾向 が確認されている。特に高度40km付近の上部成層圏や高度15km 付近の下部成 層圏には顕著な減少トレンドが存在する(WMO,1998)。これらのうち、上部成層 圏における減少は大気中の塩素量増加に帰因する気相反応により理解されてい る。下部成層圏では塩素量とエアロゾルとの相乗効果が注目されている (Dvortsov and Solomon,2001)。しかし、下部成層圏においてはオゾンの化学 的寿命が長く、循環場の変動性が大きいために力学的要因に関する十分な考察 が必要である。日本国内においては、札幌、つくば、鹿児島、那覇においてオ ゾン全量とオゾンゾンデを用いた定常観測が気象庁によりつづけられている。 それによれば、札幌においてオゾン全量減少がもっとも顕著に認められている (気象庁,2004)。その原因の一つは、極域オゾン破壊の進んだ大気の影響を受 けやすいためであると考えられているが、詳しいことは分かっていない。 Reid et al.(2000)はオゾンゾンデや人工衛星によって観測された中緯度オゾ ン減少傾向のメカニズムを解明するべく、下部成層圏で層状に認められるオゾ ン極小に着目した。彼らは、オゾン極小の分布をヨーロッパと北米で解析した 結果、ヨーロッパでその頻度が増加していることを見い出した。本研究では気 象庁から公開されている日本国内におけるオゾン観測に注目し、その長期変動 の実態を明らかにすることとともに、変動要因の解明も試みる。最初にReid et al.(2000)の定義を用いオゾン極小の頻度の季節変動、年々変動の解析を行 なったが、近年の頻度増減は認められなかった。つづいて札幌でのオゾンゾン デ観測値を用い、各高度ごとに季節変動を解析した。今回は1968年〜1975年ま でと、1990年以降との比較結果についてしめす。 今後は、等温位面上におけるEquivalent Latitudeに注目することにより、オ ゾン変動の力学的要因と化学的要因の分離を試みながら詳しい解析行なう予定 である。
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