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第 154 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ

日 時:2004年 3月 17日(水) 午後 17:00 〜 18:00
場 所:地球環境科学研究科 2階講堂

発表者:三浦 裕亮 (東京大学気候システム研究センター)
題 目:正20面体格子を用いた水平離散化法の研究

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正20面体格子を用いた水平離散化法の研究(三浦 裕亮 ) 発表要旨 :


 大気大循環モデル(AGCM)は気象学や気候変動の研究に用いられている。
現在用いられている水平解像度は100km程度であるが、将来は、雲を直接
解像できるような水平格子間隔1km程度の非静力学AGCMの開発が望まれて
いる。しかしながら、現在用いられているスペクトル法では、Gibbs現象
やルジャンドル変換の効率の問題がある。また、従来の緯度・経度座標を
用いた格子系では、極域で格子間隔が細かくなり、計算効率が落ちてしま
う。それに対し、正20面体格子(球面測地格子)系は、球面をほぼ均一に
覆うことができる上、格子法であるために並列計算に適している。また、
一様かつ等方な格子は、AGCM中の物理過程の均一性に関しても、従来の方法
に比べ優れている。このような特徴により、正20面体格子は、全球高解像度
モデルのための格子系として最近注目されてきている。

 正20面体格子に関しては、過去にいくつかの研究がなされており、有限
体積法を用いた計算では、正20面体格子をそのまま用いると計算精度が悪い
ことが知られている。この問題の解決には、格子の最適化が有効である。本
研究では、過去に提案された3つの格子最適化方法に加え、それらを修正・
変更した3つの最適化方法を提案する。また、これら6つの方法を、理想的な
格子が満たすべき条件(変数定義点・一様性・等方性など)について比較した。
その結果、全ての点で優れている最適化方法は存在せず、最適な方法の選択は
水平離散化法によることが分かった。

 次いで、浅水方程式系のモデルを用いて、水平離散化法の検討を行った。
用いた離散化法は (i)  渦度・発散・質量を同じ点で定義する Z-grid、
(ii) 運動量・質量を同じ点で定義する A-grid、(iii) 運動量を格子の頂点で、
質量を格子の中心で定義する ZM-grid の3つである。それぞれの離散化法に
ついて、計算精度を向上させる工夫を行った。また、ZM-gridについては演算子の
離散化の精度を向上させ、従来の定式化で問題となっていた赤道付近の誤差の
問題を解決した。3つの離散化法について比較を行った結果、ZM-grid の有効性が
示された。その理由については当日の発表で述べる。

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連絡先

橋岡 豪人 @北海道大学大学院地球環境科学研究科
大気海洋圏環境科学専攻大循環力学 / 気候モデリング講座
mail-to:hashioka@ees.hokudai.ac.jp / Tel: 011-706-2298