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第 52 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ

日 時:1999年 12月 8日(月) 午後 4:30 〜 6:30
場 所:地球環境科学研究科 A棟 803A

発表者:阿部 睦 (気候モデリング講座 M2)
題 目:高分解能準地衡風βチャネル2層モデルにおける帯状流変動

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高分解能準地衡風βチャネル2層モデルにおける帯状流変動 (阿部 睦) 発表要旨 :

    南半球において低振動数の帯状流変動が卓越することが観測 
 (Kidson 1988;Karoly 1990; Hartmann 1995)や、GCMによる研究 
 (Robinson 1991; Yu and Hartmann 1993)で示されている。この変動の 
 EOFパターンは60゜Sと40゜Sで逆符合をもち、ZI(Zonal Index)と呼ばれる。 
    GCMを用いた研究ではシングルジェット・ダブルジェット間の遷移に 
 対応してZIの振る舞いがみられた。 
    Lee and Feldstein(1996)は2層の準地衡風βチャネルモデルを用い、 
 先端が平らな形の風を強制として加え解析を行っている。この場合には 
 与える強制の形によって帯状流がシングル及びダブルのジェット構造を 
 示し、それらが南北に変動する様子が示された。 
  
    本研究は、傾圧擾乱を十分よく表現できるような多数の東西南北波数 
 (各々 21)を含む準地衡風βチャネル2層モデルを用いて、傾圧波と帯状 
 流との非線形相互作用という観点から帯状流変動について詳細に検討 
 することを目的としている。 
  
    今回は、南北にコサイン型のプロファイルを持つ帯状流の鉛直シアー 
 を強制として与え、この鉛直シアーの強さをパラメータとして変化させた 
 場合に現れた、以下のように大きな多様性を持つ帯状流変動について 
 報告する。 
  
    1、チャネル幅を50゜lat.とした場合 
          強制として与える鉛直シアーを徐々に増加させると、定常な 
        帯状流解はあるところで不安定化し、チャネル中央にジェット構造 
        を持つような周期解が出現する。その後この周期解は不安定化し、 
        中央にジェット構造を持つ非周期解となる。さらに、鉛直シアーを 
        増加させるとチャネルの片側にジェットが寄る非周期解(シングル 
        ジェット解)が安定に存在するようになる。 
          このジェットが中央にある構造と片側に寄る構造の境界付近では、 
        あるパラメータ範囲で両者が共存でき、徐々に遷移が起こる。 
          また、このモデルには南北対称性があり片側にジェットが寄る 
        パターンでは、南に寄るものと北によるものがペアとして存在できる。 
         
    2、チャネル幅を90゜lat.とした場合 
           強制として与える鉛直シアーを徐々に増加させると、定常な安定 
         解が不安定化し、中央にジェット構造を持つ非周期解が出現する。 
         その後ジェット軸は南北に大きく変動しはじめ、南北に 2 つの 
         ジェット構造をもつ非周期解(ダブルジェット解)が現れる。さらに 
         鉛直シアーを増加させると、チャネル幅50゜lat.の場合と同じよう 
         にチャネルの片側にジェットが寄る非周期解(シングルジェット解) 
         が現れる。 
  
         ダブルジェット解が不安定化した付近のパラメータでは、シングル 
         ジェット解と、ダブルジェット解との間で遷移が生ずる、大変興味 
         深い現象を見いだせた。これは、ダブルジェット解の「アトラクタ 
         ーの廃虚」(attractor ruin) (Itoh and Kimoto, 1996)に伴う現象 
         として解釈することが出来る。 
  
    今後は、このような周期解から非周期解への遷移過程、また非周期解 
 から非周期解への遷移過程について詳細に検討し、傾圧擾乱の役割と結び 
 付けて解析を行っていく。 
  
  
 次回の発表者  江口 菜穂  (大循環力学講座 M2)  12/15(水) 

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連絡先

伊藤 頼 / 谷口 博 @北海道大学大学院地球環境科学研究科
大気海洋圏環境科学専攻大循環 / 気候モデリング講座
mail-to:yori@ees.hokudai.ac.jp / Tel: 011-706-2357