2021年度の修士課程学生受け入れについて

(内部向け募集要項−2021年6月)

藤原正智 

受け入れ可能数:
2名

研究活動・興味:

私は、大学院生だった1994年から、教員になったあとの2013年
までの20年間、インドネシアでのオゾンゾンデ定常観測に継続的
に取り組んできました。 観測データの再処理・品質管理そして
公開を地道におこなってきていました。
院生時代には、こうして得られたデータにもとづいて、エルニ
ーニョに伴う大森林火災により対流圏オゾンが増大する広域大
気汚染問題、および、赤道ケルビン波という熱帯特有の大気波
動にともなう成層圏オゾンの対流圏への輸送過程について研究
しました。ここから、「対流圏界面領域の大気科学過程」と
「気候変動の観測」というふたつの大きな研究テーマを得て、
その後発展させてきています。

「対流圏界面領域の大気科学過程」については、特に熱帯領域
においてオゾン、水蒸気、雲粒子、気温、風、乱流等の現場観測
をおこないながら、理解を深めてきました。また、様々な全球気候
モデルも利用してきています。現在は「測定」という地球科学の
原点に立ち返って、水蒸気と雲粒子の新しい測定器の開発に力を
入れています。対流圏界面領域、あるいは、上部対流圏・下部
成層圏領域は、大気科学の全要素(力学、輸送、光化学、微物理、
放射)が絡み合った難しくてとても面白い領域です。ここ数年は、
夏のアジアモンスーン循環に伴う対流圏から成層圏への物質輸送
過程に特に注目しています。

「気候変動の観測」については、上述した新しい測定器開発を
おこなうとともに、ふたつの国際的な観測ネットワーク
(南半球オゾンゾンデ観測網 SHADOZ、GCOS基準高層観測網
GRUAN)の主要メンバーのひとりとして活動してきています。
上空大気の気候変動を必要な精度で測定することは技術的にも
国際情勢的にも容易なことではなく、世界の多くの人達の献身的
な努力が必要です。また、2013年から、国際的な全球大気再
解析データ比較プロジェクト「S-RIP」を実施してきています。
世界のいくつかの気象機関が提供している全球大気再解析データ
は、重要な気候データセットのひとつとして気候変動の理解に
広く利用されていますが、これまで系統だった比較検証はあまり
おこなわれてきていませんでした。S-RIPでは、特に成層圏の
各種過程に関わる診断量を中心として、世界各地の研究者と
再解析センターの人達と共同で比較検証をおこなってきています。
さらに最近では、エネルギー収支や水循環など、より広い気候
科学の分野をカバーする再解析比較タスクチーム「TIRA」の中心
メンバーのひとりとしても活動しています。

現在興味を持っている具体的な研究テーマについて、以下に
列記しておきます:
・アジア圏界面エアロゾル層(ATAL)と東方流出渦
・大規模火山噴火に伴う気候変動やオゾン層変動
・上部対流圏下部成層圏における物質輸送過程や乱気流生成過程
・気球搭載用の雲粒子測定器の開発
・オホーツク海高気圧や北太平洋高気圧の長期変動
・ラジオゾンデ観測網による中部成層圏観測の役割の評価

これまでに指導した学生さんの研究テーマ、出版論文(日本語の
解説記事もいくつかあります)などの詳細情報については、
以下のホームページをご覧ください。
http://wwwoa.ees.hokudai.ac.jp/~fuji/index_jp.html


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