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第 289 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ

日 時:2022/11/8(火) 13:00 -- 14:00

ツール:Zoom

発表者:小笠原 明信

題 目:2021/22冬季における札幌の大雪事例に気候変動が与えた影響の評価

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2021/22冬季における札幌の大雪事例に気候変動が与えた影響の評価(小笠原 明信)発表要旨:

         2021~22年冬季の札幌では記録的な大雪の事例が幾つか見られた。例えば、2
        月5日から6日にかけて、札幌市中央区では24時間降雪量が観測史上最大の60cmを
        記録した。Kawase et al. (2016) では、温暖化した将来気候において北日本で
        は10年に1度の大雪の場合の降水量が増加すると指摘する。しかし、過去の豪雪
        事例に関して気候変動の影響を評価した研究は少なく、去冬の大雪事例において
        気候変動が与えた影響は十分に調べられていない。また、度々起きた大雪事例は
        公共交通機関の運休や建物の倒壊等、人々にも大きな影響を与えており、大雪事
        例に着目した研究を行うことは防災・減災の観点からも重要といえる。
         従来の気候変動の研究では、季節平均など平均場のトレンドを見たものが多い。
        しかし、気圧配置パターンによって気候変動のトレンドが異なる可能性がある。
        この気圧配置毎の観点でトレンドを調べることで、より正確に気候変動が大雪事
        例に与えた影響を評価できると仮説を立てた。
         気圧配置パターンの分類の手法として、自己組織化マップ(SOMs)が挙げられ
        る。SOMsはKohonen (1995)により提唱された、ニューラルネットワークによる機
        械学習の一種であり、多次元のデータを2次元マップに落とし込むことで視覚的
        に理解しやすくなる利点がある。先行研究としては、SOMsを札幌に大雪をもたら
        す気圧配置パターンの分類に適用した例(Kawazoe et al., 2020)などがあり、
        この手法は本研究においても有用と考える。
         以上より、2021-22の冬季で札幌に大雪をもたらした事例について、その際の
        総観場に着目し、気候変動が大雪事例にどれだけ影響を与えたのかを明らかにす
        ることが本研究の目的である。
        本研究において、まずは2月5日~6日の大雪事例に着目する。日本周辺のJRA-55
        再解析データの標準化した海面更正気圧を用いて、SOMsの手法により1958/59か
        ら64冬季分(DJFM)の総観場を分類した。その中から大雪事例の際に当てはまる
        気圧配置パターンを同定し、そのパターンにおける気温等の長期変化傾向を調べ
        た。今回はこれらの解析の結果及び今後の展望について発表する。
        
    

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北海道大学大学院 環境科学院
地球圏科学専攻 大気海洋物理学・気候力学コース D1
太田 聡 (Satoshi Ota)
E-mail:ota_satoshi[at]ees.hokudai.ac.jp
([at]を@に置き変えてください)