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第 287 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ

日 時:2021/11/1(火) 14:00 -- 15:00

ツール:Zoom

発表者:澤 優助

題 目:温帯低気圧の検出と成因分析に関する研究

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温帯低気圧の検出と成因分析に関する研究(澤 優助)発表要旨:

        温帯低気圧は1年を通して最もよく見られる気象現象の1つである。
        温帯低気圧に伴う災害は主に付随する雨・雪・風によるものであり
        、それぞれ土砂災害、冬季の交通障害、樹木・建造物の倒壊などを
        もたらすことがある。これまで低気圧の発生に関して多くの研究が
        行われた結果、発生に至るまでの過程にはいくつかの異なるパター
        ンがあることが明らかにされた。低気圧を発生パターンによって分
        類した初期の研究にPetterssen and Smebye (1971)があり、タイ
        プA・タイプBという2つの低気圧発生メカニズムを提唱した。その
        後Deveson et al. (2002)はその2つに加えてタイプCが存在するこ
        とを主張した。これらの研究により低気圧発生メカニズムの一般論
        が構築されてきたが、それとは逆にその一般論と照らし合わせ、日
        々発生する低気圧を解析・分類する研究も行われている。Graf et 
        al. (2017)はその1つであり、それ以前の研究で低気圧発生への寄与
        が指摘されていた30種類の物理量を用いた主成分分析を行った。そ
        の結果から低気圧発生パターンの分類を5つに再定義し、全球の地
        域ごとにどのパターンによる発生が支配的であるかを考察した。こ
        の発生パターンの地理分布は通年の低気圧発生データを用いている
        ため、季節によって優位な発生パターンが異なるような地域ではそ
        の変化を捉えることができない。本研究は地域別・季節別の支配的
        な低気圧発生メカニズムを明らかにすることを目的とする。手法は
        大きく分けて3つの段階からなり、全球モデルを用いた低気圧生成
        、モデルの結果からの低気圧検出、検出した低気圧に対する解析・
        統計である。低気圧生成には地球流体電脳倶楽部により開発されて
        いる全球モデルDCPAMを、低気圧検出にはKasuga et al. (2021)
        の手法を用いる。解析対象の低気圧を全球モデルで生成する目的は
        、一般的な再解析データよりもデータの時間間隔を小さくすること
        ができ、より正確な発生時刻での解析を行えることである。今回の
        発表では、検出した低気圧の発生時刻における環境場の解析結果を
        紹介し、今後の展望について述べる。
    

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北海道大学大学院 環境科学院
地球圏科学専攻 大気海洋物理学・気候力学コース D1
太田 聡 (Satoshi Ota)
E-mail:ota_satoshi[at]ees.hokudai.ac.jp
([at]を@に置き変えてください)