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第 284 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ

日 時:2022/10/19(水) 13:00 -- 14:00

ツール:Zoom

発表者:髙瀬 拓海

題 目:金星中・下層雲に見られる筋雲に関する研究

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金星中・下層雲に見られる筋雲に関する研究(髙瀬 拓海)発表要旨:

        金星は大きさや質量は地球と似ているが,大気環境は地球と大きく異なっている.
        金星大気の主成分は二酸化炭素で,地表気温は約460℃,地表気圧は約90気圧に達
        する.また高度約50~70kmでは硫酸から成る雲層が全球を覆っている.このよう
        な金星大気を観測する主な手段は周回衛星である.過去には「Pioneer Venus 
        Obiter」や「Venus Express」による観測が行なわれてきた.そして2015年から
        は「あかつき」により大気観測が行われている.
        これまでは紫外線を利用した上層雲の研究が盛んに行われており,大気波動由来
        と解釈されるY字構造(Boyer and Camichel, 1961; Peralta et al. 2015)
        や巨大弓状構造(Fukuhara et al. 2017; Kouyama et al. 2017; Navarro
         and Lebonnis, 2018)が発見されている.一方で中・下層雲の研究はあまり
        進んでいない.理由として,「あかつき」以前の周回衛星では中・下層雲の
        観測が質的にも量的にも乏しかったことが挙げられる.「あかつき」に搭載
        されているIR2カメラは高画質な雲層の画像を提供しており,その画像から
        中・下層雲において小規模で複雑な現象が複数報告されてきた(Peralta et
         al. 2019; Peralta et al. 2020).しかしながら,それぞれの現象に対する詳
        細な調査は未だ手付かずであり,その多くのメカニズムは未解明のままである.
        これらの現象の担い手として考え得る大気波動や不安定擾乱は,周囲に熱や角運
        動量を輸送するため,広範囲の大気の流れに影響を及ぼす可能性がある.このこ
        とから中・下層雲の力学理解は,金星大気循環に対する理解を深める上で非常に
        重要である.
        本研究では中・下層雲で見られる現象のうち,“dark streaks”(以下,筋雲)と
        して分類される現象に着目する.観測された特徴から筋雲は重力波であると考え,
        位相速度と波長の解析を行っている.本発表では,2016年7月11日と2016年7月22
        日の解析結果と今後の展望について発表を行う.
        
    

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北海道大学大学院 環境科学院
地球圏科学専攻 大気海洋物理学・気候力学コース D1
太田 聡 (Satoshi Ota)
E-mail:ota_satoshi[at]ees.hokudai.ac.jp
([at]を@に置き変えてください)