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第 280 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ

日 時:2021/10/27(水) 13:00 -- 14:00

ツール:Zoom

発表者:白井 美彰

題 目:水蒸気起源に着目した北東アジアの夏季降水量の変動に関する研究

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水蒸気起源に着目した北東アジアの夏季降水量の変動に関する研究(白井 美彰)発表要旨:

  北東アジアはモンゴルやウイグルのような乾燥帯から中国東北部のような亜寒帯までさまざまな気候が見られる。
これらの地域では夏季降水量が年間降水量に占める割合が高く、夏季降水量の変動を調べることは重要である。
Piao et al.(2021)は1979~2018年のモンゴル周辺の夏季降水量を調べ、夏季降水量に数十年スケールの変動
があることを指摘し、太平洋十年規模変動(PDO)と大西洋数十年規模変動(AMO)が関連する可能性を指摘した。
Lianget al.(2011)は1961~2008年の中国東北部の夏季降水量の変動を調べ、夏季降水量が減少のトレンドであ
ることを指摘している。このように、隣接している地域でも降水量の変動に違いが見られるがその理由は明らかでな
い。モンゴルにおいて夏季降水をもたらす水蒸気の起源を調べた研究も存在する。Sato et al.(2007)では2003
年の6~8月の降水の起源を調べ、現地起源・中央アジア・北方向の地域で蒸発散した水蒸気の輸送が重要であること
を指摘している。また、Piaoet al.(2020)はモンゴルにおける1979~2017年の夏季降水の起源を調べ、太平洋・
現地起源・華南の蒸発散の寄与が大きいと指摘している。このように単年での水蒸気の主要な起源となる地域と長期
間での水蒸気の主要な起源となる地域が異なるがその理由は不明である。また、中国東北部についてはこのような夏
季降水をもたらす水蒸気起源の研究はほとんど行われていない。
以上をふまえ、本研究では北東アジアの夏季降水量の変動を、降水をもたらす水蒸気起源に着目して調べることを目
的とする。その際、北東アジアをモンゴルを含む乾燥地域と中国東北部を含む亜寒帯地域に分けて分析を行い、比較
を行う。本研究では色水解析を用いて対象地域の水蒸気の起源を調べた。色水解析とは水蒸気に仮想的なタグを付け、
水蒸気の起源を探る手法である。本発表では夏季降水量の年々変動の特徴と降水起源との関係について、および多雨
年について降水起源を調べた結果を発表し、今後の展望を述べる。
        
        
    

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北海道大学大学院 環境科学院
地球圏科学専攻 大気海洋物理学・気候力学コース D1
太田 聡 (Satoshi Ota)
E-mail:ota_satoshi[at]ees.hokudai.ac.jp
([at]を@に置き変えてください)