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第 269 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ

日 時:2020/10/21(水) 14:00 -- 15:00

ツール:Zoom

発表者:松寺 望

題 目:北海道における強い降雪イベントに対する地球温暖化の影響

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北海道における強い降雪イベントに対する地球温暖化の影響(松寺 望)発表要旨:

     IPCC第5次報告書によると、地球温暖化により近年極端現象の頻度が徐々に増
    加している。例えば、2018年7月に日本で起こった猛暑に関して、地球温暖化が
    進行していなければこの猛暑は起こり得なかったことが分かっている(Imada et
    al., 2019)。このように、地球温暖化による極端現象への影響のうち、猛暑や強
    い降水の頻度や強度が増加することは理解されつつあるのに対して、強い降雪へ
    の影響の理解度は未だ低い(Swain et al., 2020)。日本では中部日本について地
    球温暖化により強い降雪イベントの頻度が増加する地域があることが分かってい
    る(Sasai et al., 2019; Kawase et al., 2016)が、北海道における強い降雪の
    将来変化はほとんど研究されていない。

     日本の降雪は主に2つの典型的な総観場によってもたらされる。これらは、日
    本海側で降雪をもたらす冬季モンスーン型(以降、季節風型)と、日本海側に加え
    て関東などの太平洋側に降雪をもたらす温帯低気圧型(以降、低気圧型)である。
    中部日本では、この2つの総観場に伴って発生する強い降雪の空間分布が明確に
    異なる(Kawase et al., 2018)が、北海道ではこれらの総観場に伴う強い降雪の
    地域性や強度に関して十分に分かっていない。強い降雪の将来変化を明らかにす
    るためには、典型的な総観場の出現頻度の変化と、特定の総観場のもとで発生す
    る強い降雪の強度の変化をそれぞれ評価する必要がある。

     そこで本研究では北海道に焦点を当て、強い降雪イベント発生時の総観場の特
    徴を調査すること、そして強い降雪イベントに対する地球温暖化の影響を評価す
    ることを目的とした。

     本研究では、北海道で強い降雪イベントが発生した時の北日本周辺の海面更正
    気圧を使用してクラスター分析を行い、総観場を客観的に分類した。クラスター
    分析には非階層型のK-means法を使用した。今後、気候モデルによる温暖化予測
    データを解析することを見据えて、まず初めに過去の観測データと再解析データ
    を用いて手法を検証した。強い降雪イベントの抽出には、アメダスの1時間毎の
    積雪深から計算した3時間降雪量を使用して、各地点について近年20年間(2000/
    2001冬季~2019/2020冬季)のうち上位20事例の降雪イベントを抽出した。その結
    果、強い降雪の発生数は2000年からの10年間で20事例あるのに対し、2010年から
    の10年間では34事例あった。分類した気圧配置は季節風型と低気圧型を示してお
    り、それぞれの気圧配置で強い降雪が起こる地域には違いが見られた。
    

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北海道大学大学院 環境科学院
地球圏科学専攻 大気海洋物理学・気候力学コース D1
塚田 大河 (Taiga Tsukada)
E-mail:tsukada[at]ees.hokudai.ac.jp
([at]を@に置き変えてください)