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第 269 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ

日 時:2020/10/21(水) 13:00 -- 14:00

ツール:Zoom

発表者:葛西 健太

題 目:雲の多層構造を考慮した雲放射効果に関する研究

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雲の多層構造を考慮した雲放射効果に関する研究(葛西 健太)発表要旨:

    雲は太陽からの短波放射を反射し,地球を冷やす一方で,地球からの長波放射を
    吸収し再射出することで地球を暖めることが知られている(Ramanathan et al.,
    1989; Rossow and Lacis, 1990).これらの相反する効果の正味の効果として,
    雲は地球の放射収支を変化させるため,地球の気候を決定する要因の一つとなっ
    ている.雲は全球に広く分布しており,全球スケールでの観測が必要になるため,
    雲放射効果を見積もるために人工衛星による観測で得られたデータが使われてい
    る.2006年に能動型センサーを搭載した人工衛星CloudSatとCALIPSOが打ち上げ
    られ,現在は雲の鉛直分布に関するデータ(CloudSatデータプロダクト)が利用で
    きるようになっている.Matus and L’Ecuyer 2017, L’Ecuyer et al. 2019では
    CloudSatデータプロダクトを利用し,全球平均での雲放射効果が大気上端で-17.
    1 W/m2,地表面で-24.8 W/m2であることが示されている.また,L’Ecuyer et al.
        2019では多層構造を持つ雲(多層雲)の全球平均での放射効果が大気上端で-6.1
    W/m2,地表面で-11.9 W/m2であることが示されている.このことから多層雲は雲
    放射効果を理解するために重要であると考えられる.CloudSatデータプロダクト
    を利用した多層雲の放射効果に関する研究としてはOreopoulos et al 2017(以下
    O17)やL’Ecuyer et al. 2019(以下L19)などがある.L19では多層雲全体について
    全球平均での放射効果や放射効果の空間分布について調べられているが,多層雲
    をいくつかの種類に分類した場合の全球平均での放射効果や放射効果の空間分布
    は調べられていない.一方,O17では雲頂気圧,雲低気圧を用いて,多層雲を含
    めた雲を10種類のcloud vertical structure class(CVSクラス)に分類し,各CVS
    クラスについて全球平均での放射効果が調べられているが,放射効果の空間分布
    については調べられていない.そこで,本研究ではCloudSatデータプロダクトを
    使用して,O17のCVSクラスについて,放射効果の空間分布を求め,その違いを調
    べる.現在はCloudSatデータプロダクトの解析を行なっており,各CVSクラスに
    ついて雲量や放射効果の緯度分布を調べている.本発表では,CVSクラスの分類
    方法,各CVSクラスごとの雲量の緯度分布,放射効果の緯度分布についてと今後
    の展望を述べる.
    

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北海道大学大学院 環境科学院
地球圏科学専攻 大気海洋物理学・気候力学コース D1
塚田 大河 (Taiga Tsukada)
E-mail:tsukada[at]ees.hokudai.ac.jp
([at]を@に置き変えてください)