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第 268 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ

日 時:2019/10/23(水) 13:00 -- 14:00
場 所:環境科学院 D101

発表者:竹内 猛晶(大気海洋物理学・気候力学コース M2)
題 目:階段型地形による渦対の形成に関する研究

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階段型地形による渦対の形成に関する研究(竹内 猛晶) 発表要旨 :


 海洋における中規模渦は熱や栄養塩などの輸送において重要な役割を担うことが
知られている。特に、高気圧性渦と低気圧性渦が対をなす構造を持つ渦対はより高
い輸送能力を持つ。衛星観測により渦対の存在は確認されており、渦対が形成され
たと考えられる領域の特徴から、その形成には急勾配の海底地形の効果が重要であ
ることが示唆されている(Hughes and Miller (2017))。Dunn et al. (2001)では、
急勾配の海底地形と海洋渦の相互作用を、それぞれ点渦と階段型地形で単純化した
1.5層準地衡流モデルを用いて調べた。その結果、階段型地形により渦対の形成が
可能であることが明らかとなった。また、階段型地形と点渦の相互作用において、
地形の効果が支配的である場合に、pseudoimage解と呼ばれる定常進行解が存在す
ることを明らかにした。先行研究では、点渦と階段型地形が同じ層に存在する状況
を考えているが、現実の海洋の場合、上層の強い渦と海底地形の相互作用という視
点がより重要である。そのため、本研究では、上層に点渦、下層に階段型地形を持
つf平面2層準地衡流モデルを用いて、渦対の形成機構を含む、異なる層に存在する
渦と海底地形の相互作用を明らかにすることを目的とした。本研究ではモデルの定
式化にコンターダイナミクスを用いた。初めに、系に存在する無次元パラメータで
ある、地形の効果と点渦による移流の効果の比を用いて、系の時間発展の様子を分
類した。その結果、系の時間発展の様子は大きく分けて、(i)点渦が地形に沿って
定常的に移動、(ii)点渦が下層に存在する地形上の渦位を引き出すことで、異なる
層間で渦対を形成、(iii)渦位フロントが点渦に巻きつく、という3形態に分類でき
た。この結果から、2層の場合においてもpseudoimageが存在すること、また、その
pseudoimageの不安定化により渦対が形成されることが示唆される。そこで、線形論
を用いて解析的に2層の場合の線形pseudoimage解を導出し、その解を用いて数値的
に非線形pseudoimage解を求めて、その安定性を調べた。その結果、非線形pseudoimage解
が不安定化することにより渦対解へ遷移することが明らかとなった。

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北海道大学大学院 環境科学院
地球圏科学専攻 大気海洋物理学・気候力学コース
松下 侑未 Matsushita Yumi
E-mail:yumi-matsushita@ees.hokudai.ac.jp