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第 267 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ

日 時:2019/10/16(水) 14:00 -- 15:00
場 所:環境科学院 D101

発表者:塚田 大河(大気海洋物理学・気候力学コース M2)
題 目:ひまわり8号を用いた台風内部コア領域の風速推定と台風の変動過程の解明

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ひまわり8号を用いた台風内部コア領域の風速推定と台風の変動過程の解明(塚田 大河) 発表要旨 :


 台風の強度予報は過去20年にわたって僅かしか改善していない (Ito, 2006; Yamaguchi et al., 2018;
Courtney et al., 2019). 台風の強度予報の改善には, 台風強度推定の精度向上が不可欠である. 陸域の
観測網の及ばない海上における強度推定には, 雲パターンの見た目と経験則に基づくドボラック法が
主に用いられている(Dvorak, 1975; 1984). しかし, その推定値は気象機関毎に異なり, 不確実性の高さ
が指摘されている(Nakazawa and Hoshino, 2009). この問題の解決には, より物理的・客観的な強度推
定手法が必要である. 2015年に運用を開始したひまわり8号の観測性能は, 従来に比べて時空間分解能
が大幅に向上し, 2.5 分間隔での台風観測が可能となった(Bessho et al., 2016). 本研究ではその利点を
活かし, 台風に特化した風速導出手法を開発し, それを用いて2017年台風21号Lanの眼内部の接線風速
を求め, その運動の特徴を明らかにした.

 台風内部コアの非軸対称構造は台風の急速発達に寄与する可能性が指摘されている(e.g., Shimada and
Horinouchi, 2018). しかし, 衛星観測から非軸対称構造が定量された例はまだない. 本研究では, 開発手法
により導出した台風Lanの眼内部の代表的な接線風速からのずれとして非軸対称構造を可視化することで,
 解析期間中の眼内部に半径約 5~10 km程度のメソ渦が計8個存在することを確認した. 目視による雲追跡
から, これらのメソ渦の渦度が眼内部の平均的な渦度と同程度のオーダーであることを明らかにした.

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北海道大学大学院 環境科学院
地球圏科学専攻 大気海洋物理学・気候力学コース
松下 侑未 Matsushita Yumi
E-mail:yumi-matsushita@ees.hokudai.ac.jp