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第 264 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ
日 時:2019/10/9(水) 14:00 -- 15:00
場 所:環境科学院 D101
発表者:土屋 吉範(大気海洋物理学・気候力学コース M2)
題 目:ERA5及び旅客機データを利用した晴天乱気流指標の検証
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ERA5及び旅客機データを利用した晴天乱気流指標の検証(土屋 吉範) 発表要旨 :
航空機の運航に影響を及ぼすようなスケール(1~10 km)の乱流を航空乱気流 といい、その中でも高度数千メートル以上の上空かつ、ほとんど雲がない状態で 発生するもののことを晴天乱気流(Clear Air Turbulence, CAT)と呼ぶ。CATは 雲がほとんどない状態で発生するため視認が難しく、精度や頻度の点から衛星、 レーダー観測が困難である。そのため、CATを予測し回避するために気象データ から算出したCAT指標が採用されている。代表的なCAT指標としては、水平風の 鉛直シアー、水平風の水平変形、Ellrodの第一指標がある。水平風の鉛直シアー が大きくなると乱流が生じやすくなり、Richardson数が減少、CATが起きやすく なる。水平風の水平変形は前線の発達しやすさに関係し、水平風の鉛直シアーが 大きくなりやすくなる。水平風の鉛直シアーと水平変形を掛け合わせたものを Ellrodの第一指標と呼び、特にアメリカにおいてよく使われている。 先行研究では、CAT指標を用いたCAT発生域のシミュレーション予測(Watanabe et al. 2019) や、複数のCAT指標を用いた大西洋域におけるCAT発生頻度の予測などが行われている (Williams. 2017)。しかし、実際の旅客機による観測データを長期間に渡り利用して、 CAT指標を検証した研究は行われてきていない。 添田(修士論文, 2015)並びに田村(修士論文, 2018)は、長期に渡る旅客機の 高度データ(4 秒おき)を用い、CAT強度を60秒間の標準偏差で定義して、CAT強 度を求め、CATの発生しやすい地域や季節的特徴を議論した。使用したデータはそ れぞれ、IAGOS-MOZAIC(1994年~2011年)、IAGOS-MOZAICとIAGOS-CORE (1994年~2018年)である。IAGOS-MOZAIC,及びIAGOS-COREは大気中の微量 気体やエアロゾル粒子を長期に渡って観測する欧州のプロジェクトであり、エアバ スA340型機に搭載された測定器によって4秒おきに観測される。また、IAGOSプロ ジェクトには複数の航空会社が参加しており、全球的なデータが高時間分解能で取 得できる。 本研究では田村(修士論文, 2018)が用いた航空機データから高度の標準偏差を 求めるとともに、2018年2月に公開されたECMWFの再解析データERA5を用いて、 実際の航路に沿ったCAT指標を計算して、旅客機データを用いたCAT指標の検証を 行う。ERA5では(2019年10月現在)1979年から現在までの期間の、水平分解能0.25度、 時間分解能1時間、かつ137気圧レベルの気象データを提供されている。CAT指標とし ては水平風の鉛直シアー、水平風の水平変形、Ellrodの第一指標を用いる。まず旅客 機の航路に沿って、CAT強度とCAT指標の相関関係を調べる。その際、地域性や季節 性にも着目して解析する。 今回は、ERA5の175, 200, 225 hPa面における水平風とジオポテンシャルを用いて 200 hPa面における水平風の鉛直シアーとCAT強度を旅客機の航路に沿って計算した 結果と検証、並びに今後の展望について述べる。
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