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第 258 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ

日 時:2018/10/22(月) 14:00 -- 15:00
場 所:環境科学院 D101

発表者:大河内 雄太(大気海洋物理学・気候力学コース M2)
題 目:中緯度水温フロントに対する大気大循環場の応答時間について

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中緯度水温フロントに対する大気大循環場の応答時間について(大河内 雄太) 発表要旨 :

 Frankignoul et al(2011),Taguchi et al(2012),Reverald et al(2016)では、海
盆の西岸に形成される海洋フロントの南北移動に対して、冬季の大気大循環場に
異なるテレコネクションパターン(AO、NPO/WP、PNA)が励起されることを示した。
これらの研究は、海洋フロントの南北移動を表すインデックスを用いて、大気再
解析データに適切なラグ時間(後に紹介)で回帰することにより得られた結果を示
したものである。
解析期間などが異なっている彼らの結果は、まったく同じパターンを示してはお
らず、観測データから、海洋フロントが大気大循環場へ及ぼす影響について統一
的な解釈はまだ得られていない。

 Frankignoul et al(2011)らが適切なラグ時間を検討できたのは、大気大循環モ
デル(AGCM)を用いたDeser et al(2007)の結果を引用したからである。
Deser et al(2007)では、中緯度海洋である北大西洋域のトレンドより得られた
海面水温(SST)偏差を与え、12月1日から積分したアンサンブル実験(240メンバー)
の結果、
大気変動が励起され、2~2.5ヶ月かけてAOのような応答をすることを示した。
しかしながら、Deser et al(2007)は、与えたSST偏差・水平解像度(T42)共に、
水温フロントを(陽に)意識した実験にはなっていない。

 従って、水温フロントを陽に意識した実験設定で、水温フロントに対する大気大
循環場の応答時間を見積もることには意義があると考えた。
そのため、本研究では、AGCM(DCPAM;地球流体電脳倶楽部)を用いて、水温フロン
トを最低限解像する水平解像度(T79;Ogawa et al.2014)で実験を行う。
Deser et al(2007)の実験に習い、長期コントロール実験で取得される20個の初
期値を用いて、アンサンブル実験(20メンバー)を各々4ヶ月間積分する。
その際に、大西洋の西岸境界流である湾流が水温フロントを持たなくなるように
SST偏差を与えることで、水温フロントに対する大気大循環場の応答時間につい
て調べる。
さらに、12月からSST偏差を与える実験のみでは、中緯度海洋に対する冬の大気
応答時間を代表して評価することができないため、12月に加えて11月、1月から
も実験を行う。

 本発表では、所信表明の振り返り、行った実験設定の詳細、既にメンバー数(20
メンバー)が揃った12月スタートの実験について現段階で得られている事、それ
らを踏まえた今後の展望について発表する予定である。

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連絡先

北海道大学大学院 環境科学院
地球圏科学専攻 大気海洋物理学・気候力学コース
松下 侑未 Matsushita Yumi
E-mail:yumi-matsushita@ees.hokudai.ac.jp