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第 249 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ

日 時:2017/10/17(火) 15:00 -- 16:00
場 所:環境科学院 D101

発表者:小寺 沙也加(大気海洋物理学・気候力学コース M2)
題 目:春季極域のオゾン全量と冬季の渦熱フラックスについて

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春季極域のオゾン全量と冬季の渦熱フラックスについて(小寺 沙也加) 発表要旨 :

下部成層圏のオゾンは長い光化学的寿命をもつため,成層圏オゾンの変動には,
成層圏の力学的な効果が重要である.オゾンが生成するのは赤道域であるが,オ
ゾン全量の極大は春季の極域にある.この事実は,成層圏循環の理解を深める端
緒となった.成層圏の大気大循環はBrewer-Dobson循環 (BDC) と呼ばれ,オゾン
全量の春季極大は,成層圏におけるプラネタリー波の砕波により駆動される,冬
半球に限定された極向きの輸送により引き起こされる.成層圏の循環の指標であ
るEPフラックスの鉛直成分または渦熱フラックスとオゾン全量の変化には高い相
関があることが示されている (Fusco and Salby, 1999; Randel et al.,
2002).春季極域のオゾン全量には,南北で大きな違いがある.南半球のオゾン
破壊はオゾンホールとしてよく知られている.北半球でもオゾンは減少している
が,極渦の強さなどの力学場の違いがあり,南半球ほど深刻ではない.このよう
な違いがあることから,南北両半球のオゾンについては別々に扱われることが多
い.しかし,Weber et al. (2011) は,渦熱フラックスを用いることによって南
北を統一的に記述し,極域オゾン全量と中緯度下部成層圏の渦熱フラックスの
年々変動に高い正の相関があることを示した.顕著なオゾン破壊が進行した年な
ども含めて,良い線形関係が得られているのは大変興味深いことである.ただ
し,先行研究ではそのような結果が得られるのは経験的な結果であるとされ,相
関関係は回帰式で評価されているが,その物理的根拠は必ずしも明らかではな
い.そこで,本研究では,線形関係が成立する根拠について理解することを目的
として,オゾン全量と渦熱フラックスの気象学的対応を考察する.それをもと
に,ERA-Interim (1979-2016) の6時間ごとの再解析データを使用し,オゾンと
渦熱フラックスの対応を調べる.今回の発表では,現在の結果及び今後の課題に
ついて述べる. 

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連絡先

北海道大学大学院 環境科学院
地球圏科学専攻 大気海洋物理学・気候力学コース
三村 慧 Mimura Satoru
E-mail:s-mimura@ees.hokudai.ac.jp