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第 239 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ

日 時:2015/10/21(水) 15:00 -- 16:00
場 所:環境科学院 D201

発表者:濱野 勇臣(大気海洋物理学・気候力学コース M2)
題 目:中高緯度の温暖化が熱帯降雨分布に与える影響

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中高緯度の温暖化が熱帯降雨分布に与える影響(濱野 勇臣) 発表要旨 :

過去から将来にわたる気候変動において中高緯度と低緯度間のリンクはENSOに代表さ
れる「熱帯から熱帯外」への影響に関する研究が数多く行われている一方、近年「熱
帯外から熱帯」への影響に関する研究が注目されている(Chiang et al ,2012)。
Broccoli et al. (2006)は、理想化された海洋を結合した大気大循環モデルを用い
て、南北高緯度に非対称な熱強制を与える実験を行った結果、ハドレー循環の強度と
共に熱帯降雨分布が変化したことを示し、大気経由による変化であることを示唆し
た。そしてこれまで南北温度コントラストで議論されていたこの分布変化について、
Kang et al .(2008, 2009)は、同様の実験を行い、熱帯降雨分布が大気熱輸送の変化
で議論できることを述べた。Frierson et al. (2012)は、温暖化時の熱帯降雨分布と
大気熱輸送の変化の関係性に着目し、マルチモデル解析を行った結果、熱帯降雨分布
は温暖化時にも変化することを示し、高緯度の温暖化が熱帯降雨分布に影響を与える
可能性を示唆した。

しかし上記の先行研究は全球で温暖化した場合のみを扱った議論であることから、熱
帯降雨分布の変化は熱帯または熱帯外のどちらによる効果なのか詳しく調べられてい
ない。そして年平均での議論のため、温暖化に伴う熱帯の降雨分布変化が顕著な時期
については不明であることから、熱帯降雨分布変化の季節性についても疑問が生じ
た。

そこで温暖化したときの熱帯降雨分布変化は何で決まるのか理解することを大目的
に、本研究では、北極域の顕著に温暖化が熱帯降雨分布変化に影響するか、そして高
緯度の変化はどのようなメカニズムを介して熱帯に影響するかついての解明を目的と
する。そのための第一段階として気候モデルMIROCを用いて、全球で温暖化した場合
をした場合を熱帯温暖化と熱帯外温暖化とに分離する実験をはじめとした複数の感度
実験を行った。そして大気熱輸送の変化、ハドレー循環の上昇緯度、熱帯降雨のピー
ク緯度の間にある関係を調べた結果、各実験とも主に冬季(11~2月)に変化が見ら
れることが考えられる。本発表ではこれらの結果と考察および今後の展望について述
べる。

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連絡先

北海道大学大学院 環境科学院
地球圏科学専攻 大気海洋物理学・気候力学コース
三村 慧 Mimura Satoru
E-mail:s-mimura@ees.hokudai.ac.jp