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第 231 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ

日 時:2014/10/14(火) 15:00 -- 16:00
場 所:環境科学院 D102

発表者:天澤 俊行(大気海洋物理学・気候力学コース M2)
題 目:黒潮流路の変動が冬季の低気圧活動および関東地方の降水に与える影響

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黒潮流路の変動が冬季の低気圧活動および関東地方の降水に与える影響(天澤 俊行) 発表要旨 :

日本列島の南岸では、黒潮の大蛇行と非大蛇行といった流路変動を周期的
に繰り返している (Kawabe et al., 1995)。この流路変動は、海面水温
前線の位置を変化させ、その上空を通過する低気圧活動に影響を与える事
が先行研究により示されている。Nakamura et al. (2012)では、大蛇行時
は海面水温前線が南下することにより、非大蛇行時と比較しストームトラ
ックは南方へシフトする事を観測データから示されている。さらにHayasa
ki et al. (2013) では、MIROC4hの出力結果を解析し、大蛇行時には沿岸
の潜熱が小さくなるため低気圧が不活発であることを示唆している。
 冬季における関東地方の降水は、低気圧によってもたらされるため黒潮
の流路変動が影響する可能性が考えられる。例えば、Nakamura et al. (2
012)では大蛇行時のストームトラックが南方へシフトする事から、北から
の寒気移流が卓越し、東京で降雪頻度が高くなる事を示唆している。しか
し関東地方の低気圧を伴う降雪事例数は少なく、月ごとの解析や降水強度
への影響についての詳しい解析はされていない。ストームトラックや降雪
が起こる割合は月により異なるため、月別の解析が重要であると考える。
 本研究では、解析期間の延長と低気圧の抽出領域を拡大する事により低
気圧の事例数を増やし、黒潮流路の違いによる降水への影響を明らかにす
る事を目的とする。今回の発表では、はじめにJRA-55の海面更正気圧を用
いた低気圧の抽出方法を紹介し、東京に降水をもたらすストームトラック
の月別の結果について述べる。この結果から、降雪時のストームトラック
は降雨時と比較し南方へシフトする傾向が見られた。次に、ストームトラ
ックと東京における降雪割合を黒潮各流路時で月別にコンポジット解析を
行った結果について述べる。この結果から、全ての月において大蛇行時は
ストームトラックが南方へシフトする傾向が見られ、降雪割合は全ての月
において高い値となった。

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連絡先

北海道大学大学院 環境科学院
地球圏科学専攻 大気海洋物理学・気候力学コース
池川慎一
E-mail:Ishinichi@ees.hokudai.ac.jp