****************************************************************************************************************
第 221 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ
日 時:2012/10/30(火) 15:00 -- 17:00
場 所:環境科学院 D101
発表者:日比野 敬司(大気海洋物理学・気候力学コース M2)
題 目:再解析データを用いた大規模火山噴火時の気温変化量の評価
****************************************************************************************************************
再解析データを用いた大規模火山噴火時の気温変化量の評価 (日比野 敬司) 発表要旨 :
地球温暖化対策の1つとして、地球を人工的に冷やしたり、CO2を大気から除 去するジオエンジニアリング(気候工学)と呼ばれる手法がある。この手法の中 に成層圏にエアロゾルを散布して地球の気温を下げるという手法があるが、これ は火山噴火の影響をヒントに提案されたものである。ジオエンジニアリングとい う言葉が公になったCrutzen(2006)で取り上げられたHansen et al(1992)では 1991年6月のピナツボ火山噴火後、地球の地上気温は0.5℃下がると示された。こ の論文によってピナツボ火山噴火後0.5℃下がることが多くの文献に広まった。し かしピナツボ火山噴火を対象にした地球の気温変化に関する過去の様々な研究の 中で、Hansen et al(1992)の結果と異なった結果を示した。また、ピナツボ火山 が噴火した1991年はエルニーニョ現象(ENSO)が同時に起こっており、火山の影 響を目立たなくさせている。Free and Lanzante(2009)によると、火山の影響の 推定はENSOといった自然変動の除去法や使用するデータセットに依存すると示唆 された。Hansen et al(1992)ではENSOを考慮しておらず、モデルとエルチチョン 火山噴火時の光学的な厚さを用いた実験的な推定だったため、ピナツボ火山噴火 後0.5℃下がることの信憑性に欠ける。よって本研究では過去の研究でほとんど使 用されなかった再解析データ(ERA-40、ERA-Interim、JRA25/JCDAS、MERRA、 NCEP-NCAR、NCEP-DOE、NCEP-CFSR)を使用し、1982年のエルチチョン火山噴火、 1991年のピナツボ火山噴火を対象にし、火山噴火の気温変化の不確実性を知るこ とを目的とする。同時に、本研究では使用した再解析データに潜む問題について も議論する。 今回の発表では自然変動の除去法や火山の影響の取り扱い方といった解析方法 の話を中心に進め、初期結果、今後の方針についても発表する。
-----
連絡先