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第 212 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ

日 時:2010/11/10(水) 15:30 -- 18:00
場 所:環境科学院 D201講堂

発表者:大嶋 彬(大気海洋物理学・気候力学コース M2)
題 目:予測可能性からみたLETKFの性能調査

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予測可能性からみたLETKFの性能調査(大嶋 彬) 発表要旨 :

    データ同化は観測データと予報モデルを使い、大気の最も確からしい状態を
  推定するものである。データ同化のより良い手法を開発することは、日々の天
  気予報のみならず、気象や気候の基礎研究にも貢献する重要な課題といえる。
  本研究では、近年話題となっているデータ同化手法であるLocal Ensemble
  Transform Kalman Filter(以下LETKF)に焦点を当てる。これまでLETKFにおけ
  る解析精度の調査や、他同化手法との比較がなされ、良好な結果が得られてい
  る。しかしLETKFのパラメータである局所化の効果については定量的に見積も
  られていない。局所化とは、各グリッドでの同化時に考慮する観測領域をグリ
  ッドサイズで限定し、空間的な並列計算を可能にするLETKFの大きな利点であ
  る。本研究では、LETKFにおける局所化の効果をアンサンブル予報の予測可能
  性の観点から調査、検討し局所化の効果を定量的に見積もることを目的とする。
   LETKFをAGCM(T31L8)に適用し、完全シミュレーション実験を行った。アンサ
  ンブル予報の評価方法としてRanked Probability Skill Score(RPSS)を用い、
  局所化サイズ3×3×3grid-point、5×5×3grid-pointそして9×9×3grid-point
  の3パターンについて6時間降水量の比較を行ったところ、最適な局所化と考え
  られる5×5×3は北半球中緯度では他局所化よりも少なくとも12時間程度の予測
  可能性を伸ばすことがわかった。また、1~12時間の精度の改善もみられた。
  しかし予測10日前後には、局所化サイズ5×5×3の予測精度は3×3×3と同等程
  度になった。この原因の一つとして、より遠い観測の情報を考慮していること
  が考えられる。この結果はDJFのみに限定した結果であるので、今後は、各季節
  での比較や、局所化に用いるグリッドサイズの鉛直方向を変化させた場合の調
  査をする必要があると考えている。

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連絡先

北海道大学大学院 環境科学院
地球圏科学専攻 大気海洋物理学・気候力学コース
干場康博
E-mail:h-dragon@ees.hokudai.ac.jp