****************************************************************************************************************

第 211 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ

日 時:2010/11/9(火) 15:30 -- 18:00
場 所:環境科学院 D101講堂

発表者:三原 草介(大気海洋物理学・気候力学コース M2)
題 目:亜熱帯反流の力学に関する数値的研究

****************************************************************************************************************

亜熱帯反流の力学に関する数値的研究(三原 草介) 発表要旨 :

   亜熱帯循環の中緯度表面付近に、弱い東向きの流れが存在する。
  Uda and Hasunuma(1969)によって見出された海流であり、スベ
  ルドラップの理論に従えば、流れが南西向きでなければならない
  領域にあることから、亜熱帯反流と名付けられた。
   発見当初は、風による強制がこの流れを引き起こしていると思わ
  れていた。例えば、Yoshida and Kidokoro(1967)では、春季の
  東西流分布に特殊な風応力分布が存在することを挙げ、また、
  Roden(1975)では、エクマン収束により水温前線ができ、これによ
  り生じていると考えた。しかし、実際の観測結果と矛盾する点があ
  るので、これらの理論で亜熱帯反流を説明することは、難しい。一
  方、Takeuchi(1984)の数値実験は、特殊な風応力が存在しなくて
  も亜熱帯反流状の流れが生じること。また、海流を南北風で駆動し
  ても同じように亜熱帯反流状の流れが生じることが示され、風成循
  環と海洋の密度構造の両方が合わさることによるのではないかと考
  えられ始めた。Kubokawa and Inui(1999)の数値実験では、亜熱
  帯反流発生時の密度構造が示され、低渦位水の分布が重要であるこ
  とが示唆された。
   現実の観測においては、亜熱帯反流が低渦位水の南側に位置し、
  低渦位水による亜表層での北向きの負の大きな渦位傾度に原因する
  ことが示された(Aoki et al.(2002)、Kobashi et al(2006))。
   以上から、亜熱帯反流は、低渦位水の渦位変化や分布に大きく影
  響することが示唆される。そこで、本研究では、東京大学気候シス
  テム研究センター(現大気海洋研究所)の海洋大循環モデルCOCOを
  用いた数値計算を行い、亜熱帯反流を見ていく。まず、矩形海洋を
  設定し、同じくCOCOを用いたNishikawa and Kubokawa(2007)と
  同じ設定でモデルを走らせ、同じ結果が得られるかのチェック、お
  よび、論文で利用されている等密度面上の渦位分布等の作図プログ
  ラムを作成した。研究準備としては、次に、先行研究である
  Kubokawa and Inui (1999)の設定で実験を行い、MOMで行われた
  彼らの実験と比較し、COCOでも同様になることを確認する。その後
  に、東西一様な南北風を与えた時の東岸の密度構造(Sumata and
  Kubokawa, 2001)の変化を通じての、亜熱帯反流への影響や、海面
  温度強制に東西分布を与えた時の混合層深前線の位置の変化や消失
  (Nishikawa and Kubokawa)の、亜熱帯反流への影響をを調べる予
  定である。

-----
連絡先

北海道大学大学院 環境科学院
地球圏科学専攻 大気海洋物理学・気候力学コース
干場康博
E-mail:h-dragon@ees.hokudai.ac.jp